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タイの日本人起業家が社会貢献 少数民族の村や施設に支援物資
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恵まれない子供たちが寝食を共にし勉強を続ける「ボーディング・ソンパウ・スクール」で医薬品などの支援物資を贈る飯田直樹さん(右)。左はホンカン校長=ラオス最南端アッタプー県 日系企業の進出が進むタイで活躍する日本人起業家らが、タイ国内や近隣国の山岳地帯にある少数民族の村や恵まれない子供たちが暮らす施設に自ら支援物資を届け、交流する動きが広がっている。これまで、この種の支援は国際赤十字や非政府組織(NGO)などが行うことが多かったが、最近は個人やグループ単位で行う支援活動も珍しくない。起業家らはなぜ、組織や既存のルートに頼らずに草の根の支援を展開するのか。バンコクで薬局2店舗を経営する青年起業家の支援活動に同行した。
昨年11月下旬、平日の昼下がり。支援物資を満載した四輪駆動車がラオス最南端アッタプー県で穴だらけの未舗装路を土煙を上げながら走っていた。カンボジア、ベトナムの両国と国境を接する最貧県。
目立った工場などはなく、主産業が稲作という典型的な田園地帯だ。1万平方キロメートルの県土に人口は11万人ほどしかいない。訪れた少数民族の村は、カンボジア国境まで約20キロのカン村。3000人ほどのオーイ族200世帯が山の麓で寄り添うように暮らしている。
物資を用意したのは、バンコクで日本人常駐薬局「BLEZ」2店舗を経営する飯田直樹さん(26)。3年前に日本の大学を卒業し、就職せずにタイで起業した。経済支援をするパートナーはいたが、店舗の立ち上げ、タイ薬事法に基づく登録手続き、従業員の確保など、すべて1人で行った。タイ語と英語を自在に操り、タイ人従業員からの信頼も厚い。
支援活動を始めたのは2年前。薬局も開設でき、少しばかり「心に余裕が生まれたころ」だった。赤十字やNGO活動に取り立てて抵抗があったわけではない。むしろ、そういった活動には敬意の念を抱いていた。ただ、自分が行うなら「もっと顔の見える、実感がある支援活動がしたかった」と言う。
初めこそ個人で活動する知人に同行したが、その後は完全な自己負担だ。村の村長や学校長に要望を聞き、できるだけ必要とされるものをそろえるようにした。薬局の経営者だから薬の用意には事欠かない。だが、村には薬の扱いに慣れていない人や、タイ語や英語で書かれた取扱説明書を読めない人もいる。だから、「この薬は1回に2錠まで。連続の服用には6時間以上、空けてください」などと細かく説明しながら渡していく。
食品では、チップス類の菓子や即席麺が人気。日持ちがして、調理が簡易なところが受け入れられている理由らしい。村にコンビニエンスストアやスーパーはなく、商店があっても個人経営の簡素なものだけ。品ぞろえは驚くほど少ない。
飯田さんが寄贈する薬品や食品は珍しくて人気も上がろうというものだ。ただ、「今はこうしたものを贈っていますが、将来は伝統的な食文化に役立つものや、家族で食べることを前提としたような食材を届けたい」とも。
カン村は昨年9月に近くのセーコン川があふれ、最大で3メートルを超える洪水に見舞われた。村全体が水没し、多くの家財道具や食糧が水に浸かった。だが、ラオス政府からの支援はほとんどないという。
父母と妻、2人の娘と暮らす農家のスークンサイさん(28)はこう話す。「洪水で作付けした稲が全部流されてしまった。こういう支援があるのはうれしい」。
東南アジアは2期作、3期作が当たり前。幸い現在は復旧し、再び水田で稲を育てている。コメを粉にして煮た後に臼でこねる主食の「カウノム」を作るためだ。自給自足が原則の村。貨幣経済はあまり浸透していない。
アッタプー県の県庁所在地郊外には、恵まれない子供たちが寝食を共にし勉強を続ける「ボーディング・ソンパウ・スクール」がある。学費や食費などは一切無料。支援団体の寄付などでやりくりしている。生徒は500人ほどだが、驚くのはその年齢構成。義務教育制度は事実上機能せず、現在は11~25歳の生徒たちが男子寮、女子寮に分かれて暮らしている。寮の一角には託児所も。経済的な理由などで学校に行けなかった生徒たちが、学ぶ楽しさを肌で実感している。
飯田さんは、昨年11月上旬にタイ中部サケーオ県にある寺院経営の孤児院も訪ねている。幼稚園児から中学生までの1435人が共同生活を送る。
この日は、めったに食べることができないロールケーキを持参したところ、長蛇の列ができた。信仰の厚いタイの子供たちはそれぞれ深々とワイ(タイの挨拶)をしてからケーキを頬張った。
こうした草の根活動を続ける日本人は他にも数多くいる。バンコクが拠点の女性グループ「ヤマトナデシコ in Thailand」はミャンマー国境の孤児院に定期的に衣服などの物資を届けている。
在タイの日系人材紹介会社「パーソネル・コンサルタント」の経営者も伐採の進むマングローブの植林作業を手弁当で行っている。こうした日本人の活動の様子が海を越えて母国に伝わってほしい。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)