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株高の流れ一段と 市場好感、2日連続の年初来高値更新
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安倍晋三首相が消費税再増税の延期を決めたことで、円安株高の流れが一層強まりそうだ。市場では、年内に日経平均株価が1万8000円に到達する可能性を示唆する声も出ている。再び勢いを取り戻したかにみえる「アベノミクス」。だが、再増税見送りに伴う“リスク”も見え隠れする。
「今年度末に1万8000円を超えるとみていた日経平均だが、年内に早まる可能性もある」
大和証券の高橋卓也・日本株シニアストラテジストはこう分析する。もともと、日銀の追加緩和によって減速感が出ていた景気を下支えするという安心感が広がっていた。そこに、再増税の1年半先送りで来年度下期の企業業績が落ち込む不安が解消されるとの期待がふくらみ、株価上昇ムードに拍車がかかっている。追加緩和を表明する前日の10月30日から今月12日までの9営業日で、株価は1500円超も上昇した。
過去2年間、日銀による2度の金融緩和が主導する形で株価は約2倍に膨れた。為替も1ドル=115円台と、2年前より35円程度の円安となり、輸出企業を中心に業績は好転。「アベノミクス」は一定の成果を収めているかにみえる。
ただ、足元では、4月の消費税増税の影響に加え、円安に伴う輸入原材料価格の上昇で国民生活の負担増を懸念する声が増えてきた。地方の中小企業を中心に「マイナスの負荷が大きくなっている」と全国地方銀行協会の寺門一義会長(常陽銀行頭取)は危機感をあらわにする。
一方、日銀の黒田東彦総裁は9月の記者会見で「再増税しないことによる(金利急騰などの)リスクには対応できない」と再増税延期論を牽制していた。再増税で景気が下振れても金融政策で対応できるが、見送った場合は「政府の財政健全化の意思や努力について市場から疑念を持たれる」。長期金利急騰などの危険性が高まるとの見方だ。
ただ、日銀が10月末に追加緩和を打ち出したことで、日銀の国債購入量は毎月8兆~12兆円に増え、10兆円程度の新規発行額を上回る。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)で日本国債を担当する小川隆平ディレクターは「日銀の緩和策が続く限り、金利の急騰はあり得ない」と言い切る。
とはいえ、長い目で見れば増税先送りは財政再建の遅れにつながりかねない。景気が持ち直して金融緩和が「出口」に向かえば、日銀の国債購入量は減る。それまでに財政再建が実現できなければ、「金利上昇リスクが高まる」(みずほ証券の石津健太氏)との見方は多い。
2年前の11月14日、当時の野田佳彦首相が衆院解散を宣言して以来、日本経済の潮目は一変した。そして、今度は、安倍首相が「アベノミクス」の成否を問う衆院選挙に打って出ようとしている。果たして、再増税の延期は吉か凶か。日本経済は再び、大きな分岐点を迎えている。(飯田耕司、藤原章裕)