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【原発 仮処分の衝撃】(下)司法の停止ドミノを警戒 エネルギー政策に不安要素

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

【原発 仮処分の衝撃】(下)司法の停止ドミノを警戒 エネルギー政策に不安要素

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九州電力川内原発。左から1号機、2号機=鹿児島県薩摩川内市  「防衛やエネルギーなどの重要な国策を地方の裁判官が断じていいのか」。関西電力高浜3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定は経済界に波紋を広げ、15日に大阪市内で開かれた関西経済連合会の定例会見で、角和夫副会長(阪急阪神ホールディングス社長)は、こう疑問を呈した。

 仮処分決定による原発停止の長期化は、日本のエネルギー政策の根幹を揺るがしかねない。同様の訴訟などを抱える他原発への波及も懸念される。なかでも九州電力川内(せんだい)1、2号機も周辺住民らから鹿児島地裁に運転差し止めの仮処分を申し立てられており、22日に決定が控える。

 川内は昨年9月、再稼働の前提となる新規制基準に全国の原発で最初に合格した。すでに地元の薩摩川内市、鹿児島県が再稼働に同意しており、再稼働に向けた最後の手続きとなる原子力規制委員会による使用前検査に入っていた。7月には原子炉が起動する見込みだっただけに関係者は神経をとがらせている。

 「川内も負けたら話は原発全体に広がり、高浜の次の審理にも影響する」。関電首脳は警戒を強める。

 全国で20数件係争中

 脱原発弁護団全国連絡会のホームページによると、原発の運転差し止めを求める係争中の訴訟などは全国で20数件に上る。過去には専門家集団の電力会社側に有利な判決が続いてきた。

 高浜原発の運転差し止めの仮処分を決めたのは、昨年5月に大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた樋口英明裁判長で、関電も特定の裁判官の問題と受け止めた。ただ、他の地裁で運転を認めない判断が出た場合は話が変わってくる。東京電力福島第1原発事故を機に「電力会社の常識が司法で通じなくなってきている」(法曹関係者)といい、司法による原発停止ドミノが懸念されるからだ。

 もちろん、こうした潮流に批判の声は強い。元東大公共政策大学院特任教授の諸葛宗男氏(原子力研究開発政策)は「原発の安全性の判断は規制委が一元的に担う。それを裁判所が強制力を持って差し置くことは認められない」と指摘する。

 「火力発電の燃料費増加がなければ、アベノミクス効果は1.5倍程度になっていた」。3月6日、大阪市内で開かれたエネルギーミックス(電源構成比)を考えるシンポジウムで地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾・システム研究グループリーダーは、こう報告した。

 米エール大の浜田宏一名誉教授によると、金融緩和と財政出動を軸としたアベノミクスは国内総生産(GDP)を1.5%程度押し上げる効果がある。2013年度には、原発停止の影響で火力発電の燃料費が震災前に比べ3.6兆円(GDP換算0.7%)増えた。燃料費分のマイナスがなければ、アベノミクス効果が2.2%と1.5倍になっていたというのだ。

 英では再評価の動き

 実は、欧州で脱原発の動きが広がるなか、英国は原発が安定した電源として再評価されている。電気料金の引き下げを狙って1998年から順次電力販売の全面自由化に着手したが、電力事業者の過当競争が電力不安を招いたからだ。

 2013年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の原発版といえる制度の導入を決定。原発による電気の基準価格を設定して卸市場での取引価格が下回ると差額を電気料金に上乗せして穴埋めし、原発を稼働する発電事業者が損をしない仕組みだ。同年には約30年ぶりとなる原発を新設することも決まった。

 「福島の事故があったのに英国はなぜ原発に前向きかと聞かれる。電力不安を経験し、安定供給を保つ電源構成を考える重要性を国民も分かったからだ」。3月10日、大阪市内で講演した英国立原子力研究所のアンドリュー・シェリー主任研究員はこう説明した。

 日本では30年時点の電源構成の検討が進んでいる。安全性や経済性、安定供給、温室効果ガス排出量などを総合的に考慮して今夏に決定する。そのさなか、司法という強制力を持った不安定要素が加わった。

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 この企画は、内山智彦、板東和正、矢田幸己が担当しました。

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