SaaS~変革のプレイヤー群像

医療現場にもSaaSの波 患者と薬剤師の「架け橋」担う先端クラウド技術 (1/5ページ)

 インターネット経由でソフトウエアを利用する「SaaS」(サース)の活用が広がっている。医薬品の分野では昨年9月、薬剤師による「オンライン服薬指導」が解禁され、デジタル化の流れが加速したが、薬局では薬剤師が患者に専門的なフォローをしたくても、なかなかできない事情があったという。薬を調剤する際に記載する「薬剤服用歴」(薬歴)の作成など事務作業が大変多いためだが、こうした業務の効率化に貢献したSaaS企業として注目を集めているのが、調剤薬局向けのクラウド電子薬歴「Musubi」を展開するカケハシ(東京都中央区)だ。Musubiを導入した薬局では時間に余裕が生まれ、薬剤師が患者と向き合うことができるようになったという。カケハシ代表取締役CEO(最高経営責任者)の中川貴史氏に、今後の展望とSaaS企業が果たす役割について聞いた。

「患者さんに貢献したい」

――「Musubi」を開発されたきっかけは何だったのでしょう

中川CEO:

 カケハシは2016年3月に設立されましたが、社長の中尾豊は武田薬品工業のMR(医薬情報担当者=営業職)出身でした。祖父が医師、母親が薬剤師ということもあり、身近に頼れる医療従事者がいる環境で育ったようです。創業のタイミングで社長の中尾と私の2人で、400ほどの薬局の方にインタビューしました。

 「今、一番困っていることは何ですか」などと、新卒の薬剤師からこの道4、50年という薬局の経営者に至るまで幅広く徹底的にお話をうかがいました。その中で感じたのは、国の大きな方向性として薬局が変わりつつある一方で、現場に目を向けると非常に重たい事務作業があり、患者さんにより良い医療価値を提供したくても、そこに時間が割けないのが現状だということです。カケハシにも20人ほどの薬剤師が在籍しておりますが、薬の豊富な知識を有しているにもかかわらず、仕事の多くは、棚から薬を取ってくる、記録を書いているという状況でした。

 非常に貴重な医療資源を生かしきれていなかったのです。「患者さんに貢献したい」という強い思いをもって勉強に励む薬剤師の方がたくさんいます。日本全体の医療のあるべき姿をとらえた時に、薬剤師の果たす役割がもっと大きいのではないかと考えました。例えば、薬歴書類を書く業務。国のルールではきちんと記録を残すことが求められていますが、薬局の現場で他の業務もあるなか、記録作業だけで1日に2~3時間はかかる場合もあります。

 薬局を単に「薬を渡す」という場所ではなく、患者さんが飲んだらいけないものがないかをチェックしたり、患者さんの状況に合わせて薬の分量を調整する必要があれば医師に相談したり、あるいは、薬を飲む重要性を患者さんにお伝えしたりして、薬を飲めるように支援できる場所にしていくことが大事だと思いました。

 70代以降の方は本当にたくさんの薬を同時に飲む人も多く、患者さんによっては薬を飲んでいるだけで満腹になってしまうというケースもあります。ある薬の副作用が出ているのを防止するために別の薬が出て、さらにその副作用を防止するために別の薬が出て、というように処方の連鎖も起きています。

 そういった状況にしっかりと介入し、薬学治療を改善していくことが薬剤師の役割として求められている中で、対物業務が非常に負担になっている。そこに時間をとられ、患者さんに医療価値を届けられていない実態を痛感したのが、開発の起点になっています。

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