SaaS~変革のプレイヤー群像

医療現場にもSaaSの波 患者と薬剤師の「架け橋」担う先端クラウド技術 (3/5ページ)

LINEで患者に個別フォロー

――そこで開発されたのが、おくすり連絡帳の「Pocket Musubi」ということでしょうか

中川CEO:

 Pocket Musubiは、患者さんの自宅での服薬状況からフォローすべき患者さんをスクリーニング(選別)し、服薬期間中のフォローができるシステムです。まずは薬局と患者さんがSNSのLINEを使ってつながってもらいます。患者さんは薬局から提供されるQRコードをスマートフォンのカメラで読み込むだけで服用薬のデータが自動入力されます。

 薬剤師の方は一度かんたんな設定を行うだけで、患者さんの服用薬に合わせた状況確認の質問をLINEで自動的に送信できるようになります。質問は、薬の飲み方や副作用、生活上の注意点などで、服用薬ごとに異なる質問が用意されています。患者さんが困りそうなタイミングで「こんな症状、出ていませんか」といった質問をピンポイントで投げかけるようになっています。

 患者さんとしては「自分に合わせて質問をしてくれている」「どうして分かったんだろう」という気持ちになるでしょうし、わざわざ電話を取る手間もありません。何も問題がなければ「問題ない」という回答で済みますし、副作用の可能性などを感知すれば、薬剤師に通知が届くようになっています。患者さんから寄せられた回答を薬剤師が確認し、問題発生の可能性があると判断した場合には、LINEや電話を使って個別フォローができます。患者さんの症状の程度や詳細をヒアリングしながら、「今すぐ薬を飲むのはやめて、こうしてください」といった具体的なフォローアップができます。

 これまでは、薬剤師が患者さんに電話をかけても、ほとんどの患者さんは問題がありませんから徒労に終わることも少なくありませんでした。Pocket Musubiでは、問題がある患者さんに対しピンポイントでアプローチできますので、薬剤師の労力を大幅に削減できると同時に、より多くの患者さんをフォローアップできるようになったと思います。今後は在宅医療の支援という分野にもチャレンジしていければと思っています。

――昨年9月の改正薬機法(医療品医療機器等法)の施行で、スマートフォンやタブレットを使ったオンライン服薬指導が解禁されました。在宅医療に対応したシステムやサポートはどうなっていますか

中川CEO:

 改正薬機法の施行によって、薬剤師の方が薬局で薬を渡す際の服薬指導だけでなく、患者さんが薬を飲む期間中に支援するということも義務化されました。薬局ではこれまで、患者さんの目の前に薬を置いて紙を使って説明することができましたが、オンラインでは、患者さんの理解度が落ちてしまうのではないかといった問題もあります。ですが、Musubiでは画面を提示しながら患者さんのスマートフォンなどを通じて服薬指導できますので、患者さん自身の疾患体質や薬剤への理解度を深めることができると思っています。

 オンライン化して利便性が向上したけど質は落ちる、ではいけません。医療の質を落とさず、理解を促すことができる環境を作ることが大切です。質や安全性をどう担保しながらオンライン化を進めていくか、ということが今後、大事な観点になると思います。

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