SaaS~変革のプレイヤー群像

医療現場にもSaaSの波 患者と薬剤師の「架け橋」担う先端クラウド技術 (5/5ページ)

「共創」としてのイノベーション

――新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、新技術で社会やビジネスを変革するDXの流れがあらゆる分野で加速しています。「ウィズ・コロナ」の時代、医療分野でのSaaSの利用はどのようになっていくと考えますか

中川CEO:

 平時でも多忙な医療現場にこうした重たい負荷がかかってしまうと、医療現場としては非常に苦しい状況に立たされると思います。いかに効率的に、医療従事者がより良い医療を提供するための基盤づくりをできるかが大事です。基盤が整備されていないと、新型コロナのような大きなイベントが短期的に発生した際、現場はなかなか対応できません。そのしわ寄せを、気合いと根性で解決しなければいけないというのは非常に辛いことです。

 しっかりとDXを推進していく必要があります。例えば、紙の処方箋を電子化していく。また、患者さんの情報を医療機関同士で共有できる「医療情報インフラ」を整備し、医療の質を上げていくといったことなどが重要と考えます。

――処方箋や電子カルテには高度なプライバシー情報が含まれていますが、クラウドでデータを管理する上で、セキュリティ面の対策、整備はどうなっていますか

中川CEO:

 現在のクラウド技術では、データを安全に保管できる基盤が整備されています。クラウドのメリットは大きく、例えば、台風などの自然災害で薬局が水に浸かってしまった場合、ローカル(現地の薬局)にデータを保管しているとデータを喪失してしまうリスクがあります。ですが、クラウドでデータを保管することで、災害時も患者さんの過去の治療歴や薬歴を把握できます。患者さんのデータの安全性やセキュリティを担保した形で、どのように実装を進めていくかということが大事だと思っています。と同時に、患者さんにも、プライバシーについての説明をすることで同意を得ることが必要だと思っています。

――DXが加速していく中、業界に特化した「バーティカルSaaS」企業として、今後の展望についてどうお考えかお聞かせください

中川CEO:

 医療や製造業、金融、農業、水産業など、従来では手が及ばなかった堅い業界にイノベーションの波が起きつつあります。これがDXそのものだと思います。バーティカルSaaSという業態は今後、どんどん加速していくのではないかと思っています。先端を行くバーティカルSaaSの分野で、カケハシはその一端を担っていると自負しています。今後も多くのバーティカルSaaSが生まれ、より良くなっていくきっかけになっていくのではないかと思います。手と手を取り合ってより良い世界を作っていく。「共創」としてのイノベーション(技術革新)が、バーティカルSaaSだと思います。

 カケハシも「Musubi」を中心としながら、新しいサービスによって支援できる範囲をますます広げていこうと思っています。患者さんにとっても、医療従事者にとっても、より良いサービスの提供をアグレッシブに加速させていきたいです。

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
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人口減の日本経済にとって生産性の向上は喫緊の課題。SaaSはその切り札となり得ます。【SaaS~変革のプレイヤー群像】では、勃興期にあるSaaS業界のスタートアップ企業を追い、日本経済の変革の可能性を探ります。アーカイブはこちら

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