【これからの健康と栄養を考えるシンポジウム】アンチエイジング・健康寿命の延長は遺伝子にあった!

健康や老化など生命の営みを設計する遺伝子。その働きを上手にコントロールする仕組みを食生活の面から考えようという市民公開講座「アンチエイジング・健康寿命の延長は遺伝子にあった!」(昭和大学、産経新聞社主催、フォーデイズ特別協賛)が、2月、大阪市内で開かれた。妊娠時の栄養摂取の大切さ、食事をおいしいと感じるためのノウハウ、長寿食材とは…最新の研究データに基づく“暮らしの知恵”が紹介され、超満員の会場を沸かせた。講座概要を報告する。

たばこ、肥満・・・活性酸素が老化早める

松永政司氏

<まつなが・まさじ>1944年生まれ。北海道大学、京都大学卒。京都大学工学博士、昭和大学医学博士。食品素材としての核酸の研究・普及に努める。

 なぜ人は老化するか、2つの説がある。1つはプログラム説。生まれた時から赤ちゃん→大人とプログラムされている。もう1つはストレス老化。さまざまな環境要因、ストレスを受けて老化が早まるが、その最大の原因はたばこや紫外線、排出ガス、肥満などによって生じる活性酸素にあるといわれている。
 病気や老化にはそうなる遺伝子がある。一方で病気を治す遺伝子や長寿遺伝子もある。こうした遺伝子は普段はほとんど働いていない。生活習慣によって遺伝子がスイッチオンになり動き出す。中でもとくに食べ物が関係していることが分かってきた。
 がんとかアルツハイマー、糖尿病、老化などの遺伝子が活性酸素によって傷つけられ、病気を発症する。老化は、染色体の末端にあって遺伝子が傷つくのを守っているテロメアの機能が失われるからだといわれている。5年前ロンドンで女性を対象にテロメアの減り具合が調べられたが、たばこを吸う人は吸わない人の2倍もの速度で減少していた。たばこが活性酸素発生の原因と考えられる。
 では、活性酸素を抑えるにはどうすべきか。活性酸素はテロメアの塩基配列TTAGGGの中のGを傷つけGは、8-OHdGになる。それがテロメアが短くなる原因のひとつであることが分かった。Gの酸化を防ぐのに一番効果を発揮したのはサケの白子の核酸で、極端な抑制効果を示した。
 われわれは線虫を使って核酸の酸化ストレス耐性の研究を行っているところであり、核酸が長寿遺伝子の発現に影響を与えることが確認されつつある。

核酸取り込み病気の進行を抑える

塩田清二氏

<しおだ・せいじ>1974年早稲田大学卒。医学博士。米国チューレン大学医学部客員教授を兼務。研究テーマは神経細胞死の防御、再生医学など。

 老化するといろいろな病気が出てくるが、大きな原因は酸化的ストレスであり、その原因として活性酸素やフリーラジカルが考えられる。体内で産生されると、遺伝子や細胞を構成するタンパク質と細胞の膜に損傷を与え、最終的に細胞の死につながる。この酸化的ストレスが原因となって生じる病気の進行を、核酸栄養が抑える役目をすると考えられる。
 核酸はどこから来るかというと、食物を食べて肝臓で作る。しかし老化で核酸を作る能力が低下してくると、それを補うため、外から核酸を取り込んで小腸で吸収する。その結果、非常に短期間で効率よく、核酸が体内で代謝され、免疫など体にとって有益な働きをする。
 核酸栄養がどれだけ病気の進行を抑えられるか、われわれは日本に約60万人の患者がいるといわれるリウマチ様関節炎について動物モデルを用いて研究した。抗炎症剤などの治療薬は強い副作用があり、これらの患者さんにとって代替医療が求められているためだ。
 まず、ネズミに3種類のエサ(無核タンパク、低濃度と高濃度の核タンパク)を3カ月間食べさせた。その結果、高濃度の核タンパクを食べたリウマチ様関節炎のモデル動物では炎症が改善され、関節肥大などの症状が抑えられた。血中のリウマチファクターの値も低下した。一方、肝臓障害や脳機能障害に対しても核酸栄養が有効であることが、今までのわれわれの動物実験で明らかになっている。
 最後に、健康な生活を送るための、7つの習慣を紹介する。ブレスローという学者の提言だが、①十分な睡眠②禁煙③体重の維持④深酒しない⑤定期的な運動⑥朝食をきちんと取る⑦間食しない-。

昭和大学・細山田明義学長 私たちの体を構成している細胞は常に新しく生まれ変わり、古いものは死んでいく。どこかで新しい細胞が生まれなくなると、それが寿命が尽きたことになるわけです。ところが細胞が生まれ変わる間に、いろいろなストレスや病気で細胞が傷つき、その途中で生命が絶たれることがあります。
 今日のお話は、年を取っていくうえで健康寿命を維持するポイントは何か、その要因を遺伝子のレベルで解読する、最新の研究結果を発表してもらいます。
 若い状態のままで年を取れれば、こんなにうれしいことはありません。健康で楽しく、若いまま年老いていくことは、誰もが望むことです。そのためには何に気をつけ、食べ物などはどうしたら良いのか、講師の先生方に分かりやすく、丁寧に話してもらいます。