世界で最も薄い透明導電フィルム(下)は、従来のフィルム(上)より軟らかい【拡大】
今回の「極薄技術」を実現するためにTDKが活用したのは、薄いフィルム上に磁気を塗布する技術。カセット式の音楽機器やビデオ機器などに使われ、かつての主力事業の一つだった「磁気テープ」で培った技術で、「極薄の素材に何かを塗る」という共通性を利用した。
透明導電フィルムの土台となる樹脂を薄くすれば、光を調整する膜などを均一にコーティングすることが難しくなる。塗り方にムラができると、画面を指で触れるとにじんだり、ぼやけやすくなり、スマホの性能を落としてしまう。その難題を克服したのが、世界を席巻したカセットテープの“遺産”だった。
TDKは14年3月には法人向けも含めて「磁気テープ」事業から完全撤退する。カセットテープを受け継いだ新たな技術が、同社の屋台骨を支える事業に育つ可能性は小さくない。(小島清利)