日本製紙の合弁会社が建設を進める新工場=タイ西部のラチャブリ県バンポン【拡大】
人口減少や情報伝達の電子化を背景に国内の紙需要が伸び悩む中、製紙会社が生き残りをかけて海外展開を強化している。生産拠点の新設やM&A(企業の合併・買収)には潤沢な手元資金が必要になるなど課題も少なくないが、国内依存からの脱皮を図らないと将来の成長が見込めないとの危機感は強い。それぞれの得意分野で海を越え、経済成長が続く新興国を中心に伸びる需要を取り込む構えだ。
東南ア市場を開拓
ミャンマーとの国境に近いタイ西部ラチャブリ県バンポン。タイの製紙会社、SCGペーパーの敷地内で、日本製紙が55%出資するSCGとの合弁会社「サイアム・ニッポン・インダストリアル・ペーパー(SNP)」の新工場建設が進んでいる。来年4月から営業運転を始め、片面がツルツルで、反対側の面がザラザラの「片艶(かたつや)紙」と呼ばれる産業用紙をタイ国内や東南アジア向けに生産する計画だ。
「海外で伸ばしたい主軸は産業用紙」と説明するのは、日本製紙の鹿島久仁彦・企画本部長代理兼海外事業部長。各種産業の製造工程で使われる紙に強みを持つ同社は、アイロンプリントなどにも使われる捺染(なっせん)転写紙や食品包装紙、建材用化粧紙向けなど、あらゆる産業用途で原資となる片艶紙の需要が増えると見込み、東南アジア市場の開拓に注力する構えだ。