新年度は、昇格直後の新任管理職の方とお会いする機会が多くなる。喜びと不安を伴いながらも、チームを率いていこうとする意欲あふれる表情は見ていて気持ちがいい。てきぱきと明確な指示をする、聞かれたことには即座に答える、大事な決断は自分が責任を持って行うなど、一刻も早く部下に認めてもらいたいという思いも強くなる。
しかしここに、新任管理職にとっての落とし穴がある。部下に認めてもらおうという気持ちが強すぎるあまり、いつも完璧な正解を提示し続けようとするのである。確かに優秀な管理職であれば、ある程度はそれができる。だが、それが的確であればあるほど部下は安心してしまい、自分で考えなくなる。つまり思考が停止してしまうのだ。やがて彼らは上司の方を向いて仕事をするようになる。上司の判断、上司の指示、上司のことば、これらを待つ依存型人間が増えてきて、その場の仕事は回っているが、想像力や挑戦心に乏しいチームになってしまう。
私は新任管理職の方には次のようなメッセージを送っている。「部下と問いを共有しよう。」
自分が考えるチームのビジョンや戦略、戦術などを示すことは、管理職としてもちろん重要なことである。そのうえで、自分が持っている問題意識を「問い」として部下と共有するのである。
「今のやり方が本当にベストなのか?」「われわれのサービスはなぜ一流といえるのか?」「過去に決めた目標の妥当性はいまでもあるのか?」「われわれのチームより優れているチームがあるとすれば、それはどのようなチームなのか?」など、やや高めのレベルのものがよい。人は問いを投げかけられると、頭の中に答えを記入するための空欄を無意識のうちに作り、自ら考えようとする。