「日本のハラルビジネスをめぐる状況はとても危険だ。宗教というものに対する認識が甘いのではないか」
今月初め、都内で開かれたハラルビジネスセミナーに出席するため来日したクレッセントレーティングの最高経営責任者(CEO)のファザール・バハルディーン氏は、開口一番、日本の現状に警鐘を鳴らした。
彼は、2009年にムスリム(イスラム教徒)観光客のための情報サイトを運営する会社をシンガポールで立ち上げたが、そのときに初めて取材して以来の友人だ。今回の訪日を機に、久しぶりに旧交を温めようと食事に誘ったところ、のっけから厳しい言葉が飛び出した。
取材した09年当時、日本ではハラルという言葉自体、あまりなじみがなかった。その後、東南アジアからの観光客招致策の一環として、ムスリムが安心して食べたり、身につけることができるものを示す「ハラル認証」への関心が高まり、日本でもハラル関連のビジネスが注目を集めるようになった。
それもあってファザール氏自身、最近は日本の観光庁だけでなく東京や大阪、北海道などの各自治体を訪れ、観光客誘致の担当者らと意見交換するようになった。シンガポール政府からもムスリム関連の観光ビジネスを中心にアドバイスを求められる立場だ。
そんな彼にとって、日本のハラルをめぐる対応はひどいという。「日本がハラルビジネスに興味を持つのはいいが、ハラル認証をふつうの民間企業が出すなどとんでもない」と指摘する。
彼によると、ハラル認証は世界に約400あるが、日本でハラル認証を発行するという団体は90もあるという。「日本でまともな認証は3つだけ。あとはいいかげんなもの、はっきり言って嘘つきだ」と手厳しい。インドネシアのLPPOM-MUI(インドネシア・ウラマ評議会の食品・薬品・化粧品審査会)やマレーシア政府イスラム開発局(JAKIM)など権威あるハラル認証機関から認められている団体が出す認証ならともかく、「日本で最近よく聞くローカルハラルなどというのはあり得ない」と言うのだ。