大胆な「設計構想」を取り入れたテスラ・モーターズの「モデルS」【拡大】
□エレクトリフィケーションコンサルティング代表・和田憲一郎
■前提条件はいったん無視して考える
新しい商品を企画・開発しようとするとき、エンジニアであれば「設計構想」から入る人が多いのではないだろうか。どのようなアイデアで、どのような技術を盛り込み、どのような商品を目指していくのか。初期段階で狙いを明らかにする大切なステップである。
そのような時、経験の少ないエンジニアに「設計構想」の作成を任せると、あまり良いモノが出てこない場合がある。経験の少ないエンジニアは、過去の事例を調べ、定まっている前提条件・設計条件を考慮し、その範囲で構想を練る。しかし、最終的にあまり面白みのない、こぢんまりとまとまった「設計構想」になりがちなのである。
◆「大胆な企てが必要」
ただ、おそらく経験を積んだエンジニアは知っているのではないだろうか。実用化しようとすればするほど、最初に考えた「設計構想」以上のものはできないことを。つまり、実用化の局面に入ると、いろいろな詳細条件が入り、最後には角がそぎ落とされ、とがったところ、面白みが損なわれてしまう。
逆にいえば、最初の段階で大胆な企てをしない限りすごいものはできない。このため、前提条件であろうが設計条件であろうが、初期の段階ではいったん取り払って、自由な視点から見つめ直すことが大切となる。
最近のクルマの例でいえば、テスラ・モーターズが投入したプレミアムEVセダンの「モデルS」であろうか。初期モデルはテスラロードースターであり、シャシーはロータスに発注していたため、主な開発はリチウムイオン電池ASSYやモーター、制御などの駆動開発であった。