□エレクトリフィケーションコンサルティング代表・和田憲一郎
読者の中には設計部門の責任者をしている方もいるのではないだろうか。日々、図面や仕様書と格闘し、どうすれば商品性や目標性能、コストを満足することができるのか悪戦苦闘されていると思われる。
筆者も、何もなかった状態から構造を考え、新しいものを生み出す設計の仕事が好きで、20年以上も携わってきた。しかし、最近コンピューターによる設計、いわゆるCAD設計が進んだせいか、笑えない話も多い。今回はそれについて述べたい。
◆CAD設計の弊害
「えっ、これどうやって作ったんですか?」
先日、ある中小企業を訪れたとき、出されたサンプルを見て思わず、そう聞いてしまった。
その部品は板金プレスでありながら、まるで複数の入れ子構造を持つ、樹脂成型品のような複雑な形状をしていた。
筆者も設計を長くやっていたので、およそのモノは見ただけでどうやって作るのか分かる。その時はしばらく考え、後でその会社社長に確認したところ、だいたいのプロセスを当てることができた。
しかし、「普通はそんな設計はしないな」と思いながら社長に確認した。「もっと他の方法で同じ構造をできる方法があるように思えるが、なぜそうしなかったのか?」と。その時の答えは「客先の図面がその構造になっていたから、検討してそれができるようにした」とのこと。