昭和60年4月1日の通信自由化で電電公社が民営化され、NTTが誕生してから30年がたった。この間、市場規模は4倍の22兆円超に拡大。安倍晋三首相が「ICT(情報通信技術)活用による産業競争力向上」を重要政策に掲げるなど、日本経済を牽(けん)引(いん)するまでに成長を遂げた。一方、競争の舞台は電話からインターネットやスマートフォンに移り、その流れに乗ったソフトバンクが3社目の総合通信事業者に躍り出た。(芳賀由明)
ソフトバンクは1日付で通信4子会社を合併する。携帯電話事業のソフトバンクモバイルに、固定通信事業のソフトバンクテレコム、ADSL(非対称デジタル加入者線)事業のソフトバンクBB、携帯・PHS事業のワイモバイルを統合。売上高3兆5千億円超、従業員1万7千人、携帯電話(PHS含む)契約数はKDDIを上回る4700万件に達する。
今夏にも、ソフトバンクモバイルの社名から「モバイル」の文字が消える見通しだ。NTT、KDDIに次ぐ第3の総合通信業者となり、通信市場は名実ともに3極態勢となる。
「また孫さんの大風呂敷が始まった」。平成18年、ソフトバンクは英ボーダフォンの日本法人を買収し携帯電話事業に参入。孫正義社長は「10年以内にNTTドコモを抜く」と豪語し、その場にいた社員を苦笑いさせた。しかし、7年後の25年には米携帯3位のスプリントを買収し、この年の営業利益が1兆円を突破。大風呂敷は現実になった。
25年度の3グループの連結売上高の合計は22兆円強。2社体制当時と比較すると、実質GDPの伸びが1・5倍足らずの中、4倍の伸びを示している。