「商品の品質損なわず」
デジタルカメラやスマートフォンの普及で、かつて本業だった写真フィルム需要の“消失”に直面した富士フイルムが、見事な業態転換で荒波を乗り切ったことはよく知られている。推進した多角化の柱の一つが、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレーの材料となる偏光板保護フィルムの製造・販売だ。溶剤を使うため、乾燥させる工程が重要になる。同社は熱の再利用により、この工程でのエネルギー使用量を約50%削減することに成功した。
これは、特定の方向の光だけを通過させる特徴を持つ「偏光板」を保護するフィルムで、富士フイルムが世界シェアの約7割を握る。富士フイルム九州熊本工場(熊本県菊陽町)、富士フイルムオプトマテリアルズ(静岡県吉田町)、神奈川工場足柄サイト(神奈川県南足柄市)の国内3拠点で生産。幅1.5~2メートルなどの巨大なラップのような形状で、偏光板メーカーに販売する。商品名は「フジタック」など。
工程は繊維質の一種である「セルローストリアセテート」を溶剤で溶かすところから始まる。濾過(ろか)し、薄く引き延ばした後、ヒーターで100度以上に温めて乾燥させる。このとき、揮発物である溶剤が混じったガスを排出すると、外部の環境に負荷をかけてしまうため、ガスを冷却し、溶剤を凝縮(液化)させて回収する。