東京モーターショーが29日(一般公開は30日)から11月8日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開かれる。世界11カ国の計160社が参加し、2輪車などを含む76台が世界で初めて公開される。次代の環境対応車として水素で走る燃料電池車(FCV)や、電気自動車(EV)などが競演。開発競争が過熱する自動運転技術も体感できる。国内市場が低迷する中、クルマの近未来を占う祭典に注目が集まる。
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「先進技術や新しい価値を提供する日本のクルマ作りのショーケース(陳列棚)にしたい」。日本自動車工業会(自工会)の池史彦会長はこう語る。
出展で目立つのが日本の“お家芸”ともいえる環境対応車だ。走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないFCVでは、トヨタ自動車が発電機として活用できるコンセプト車「FCV PLUS(プラス)」を初公開する。駐車中は地域の電力網などにエネルギーを供給。クルマとして寿命を終えても燃料電池は発電機として再利用できる設計にし、水素社会の実現を後押しする。
ホンダは来年3月までに市販する5人乗りの新型FCVを出展。3分の水素充填で700キロ以上の走行を可能にする見込みだ。これに対し、EVでは日産自動車が小型車「リーフ」の改良モデルを参考出展するほか、「軽」やスポーツ用多目的車(SUV)のコンセプト車を初公開してラインアップの充実をアピールする。
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一方、平成32年ごろの実用化が見込まれる自動運転技術の出展も盛んだ。富士重工業は安全技術「アイサイト」を進化させ、高速道路の自動運転を可能にしたSUVのコンセプト車を世界初公開する。三菱自動車もクルマが自動で駐車スペースを見つけて縦列駐車ができる技術を公開する。
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スポーツ車にも注目が集まる。トヨタは“ヨタハチ”の愛称で親しまれた「トヨタスポーツ800」を彷彿とさせる「S-FR」のコンセプト車を展示。ホンダは17年に生産を終えた「NSX」を復活させ、北米で来春発売する予定の市販モデルを日本で初めて公開する。マツダも24年に生産を終了したロータリーエンジンを搭載したコンセプト車を出展する見込みだ。
44回目を迎えるクルマの祭典は、独フランクフルトや仏パリなどと並ぶ「世界5大モーターショー」の一つ。だが、若者を中心にした車離れなどの影響で前回25年の来場者数は90万2800人と、最盛期の3年に201万8500人の半分以下に縮小。昨年の消費税増税や、今年4月の軽自動車税の引き上げで新車販売が落ち込む中、「国内販売の起爆剤」(自工会の池会長)としてクルマの魅力を伝えることができるかがが鍵になる。(会田聡)