シンガポールで行われた「sakefanWorld」の発表イベントで、実際にアプリを体験する来場者【拡大】
□平出淑恵(酒サムライコーディネーター)
口の悪い海外のワイン関係者が筆者につぶやいたことがある。「蔵元は本当はわれわれに日本酒を売りたくないんだよ。だって、われわれには読めないラベルで輸出してくるからね」。日本語だけの酒のラベルについて語っていることは明白で、反論のしようがなかった。
その言葉には、海外市場向けの日本酒の情報が少な過ぎるという批判が込められていた。ラベルは、その中身について語っているものの、日本語だけで通用する国などまずない。そこで、「クールジャパン政策」の一環として、経済産業省が外部委託して開発したのが「sakefan World」のウェブサイトとスマートフォンアプリだ。
内閣官房をはじめ国税庁、外務省、農林水産省、観光庁の関係省庁と日本酒造組合中央会が連携して酒の付加価値を高めるための関連情報を提供し、輸出促進や蔵元を中心とした地域へのインバウンド(訪日外国人観光客)集客による活性化を目指している。
国内の蔵元10社で実証実験を始め、現在は他の蔵元からの掲載リクエストも受け付けている。サイトでは酒やその産地、蔵元、海外で日本酒を扱っている店の紹介、用語解説もある。スマホアプリは日本酒ラベルを読み取り、アルコール度数や酒米、精米歩合などに加え、適した飲み方、食べ合わせメニュー、動画や写真による酒造りのストーリーやつくり手の思い、蔵元や周辺地域の情報などを英語と日本語で発信している。