会見する(左から)SGホールディングス株式会社・町田公志代表取締役社長、佐川急便株式会社・荒木秀夫代表取締役社長、株式会社日立物流・中谷康夫代表執行役社長、株式会社日立製作所・齊藤裕代表執行役執行役副社長=30日午後、東京都千代田区・帝国ホテル(納冨康撮影)【拡大】
SGホールディングス(HD)と日立グループとの資本・業務提携の背景には、経営環境をめぐる両社の利害一致がある。日立は物流部門を非子会社化することで高収益事業に注力。SGHDは主戦場の物流業界で進むサービスの多様化やグローバル化に対応できることになる。
日立グループの中核である日立製作所は社会インフラ事業に注力しており、事業の選択と集中にも積極的だ。もともと、物流はグループにとって収益の柱となる事業ではなく、株式譲渡により連結決算への影響が抑えられる持ち分法適用会社とすることが得策と判断した。
加えて、グループの主力事業の一つに位置づける、すべてのものをインターネットでつなげる「インターネット・オブ・シングス(IoT)」の普及を見据え、自社のITサービスをまずは物流分野で生かし、今後、さまざまな業種にも広げたい考えだ。
SGHDにとっても、日立との提携は渡りに船だ。
近年はネット通販市場が国境を越えて拡大。経済産業省は日米中3国間の越境市場規模は平成26年からの5年間で約1.4倍に膨らむと試算する。国内でも通販各社が時間指定サービスを強化する動きもあり、物流分野は多様なネットワークと高度化が求められる。
日立物流は受託業務でメーカーやメディカル業界などで有力顧客を多く抱え、海外事業の比率も38%と高い。SGHDの町田公志社長は「自分たちの自己成長では届かないところ」と持ち上げた。
競合他社も、業界最大手の日本通運が26年に家電大手のパナソニックとNECから物流子会社を買収したほか、ヤマトHDや日本郵便も航空大手と提携し海外の物流網整備に動く。今後も差別化や事業拡大を目指す再編の動きは続きそうだ。(佐久間修志)