鉄鋼大手のJFEスチールは23日、製鉄所の競争力向上を目的に、数百億円をかけて設備を増強する方針を固めた。主力の西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)で、高炉の目詰まりを防ぐ「焼結炉」を追加導入する。中国の過剰生産などで厳しい収益環境が続き、世界規模で競争が激しくなる中、生産効率を高めて生き残りを図る。
焼結炉は、高炉で鉄鉱石から鉄を生産する際の前処理に使う。鉄鉱石の粉に石灰石を混ぜて「ペレット」に焼き固めることで、高炉の目詰まりを防ぎ、炉内の下から上へガスを流れやすくする。
鉄鋼業界では、原料となる石炭の価格が夏以降に急騰。鉄鉱石やペレットも値上がりしており、各社のコストを圧迫している。
JFEは一部のペレットを外部から購入しているが、自前の設備を増やすことで購入量を減らし、コストを抑制。さらに、高炉の目詰まりが少なくなれば生産効率が高まり、原料価格の上昇に左右されない強い体質を築ける。
鉄鋼各社の業績は、原料炭価格の高騰だけでなく、中国の過剰生産による市況低迷で急速に悪化しつつある。JFEも平成29年3月期の連結経常損益が、14年の発足以来初の赤字に転落する見通しで、収益改善が急務となっている。
JFEは、西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)でも、石炭を蒸し焼きにする「コークス炉」を改修し、近く稼働させる。27年度から3年間で6500億円を国内の設備投資にあて、1100億円のコスト削減を目指す方針だ。
他の鉄鋼大手も生産集約や老朽化設備の更新を通じた競争力向上に取り組んでいる。
新日鉄住金は君津製鉄所(千葉県君津市)の高炉1基を休止したほか、33年3月末には八幡製鉄所小倉地区(北九州市)の1基も止める。
神戸製鋼所も30年3月までに神戸製鉄所(神戸市)の高炉を休止し、同じ兵庫県の加古川製鉄所(加古川市)に集約する計画。
両社は、集約と並行して生産効率を高める設備を増強する方針だ。