東芝は11日、懸案だった2016年4~12月期決算の発表にこぎ着けたが、経営再建に向けた課題はなお山積する。最大の焦点は半導体メモリー事業の高値売却だ。米原子力子会社の破綻処理で、17年3月末に6200億円の債務超過の見通しとなり、財務改善が急がれる。東芝への不信感を募らせる地方銀行による取引縮小の動きも懸念される。
東芝は半導体メモリー事業を分社して設立した「東芝メモリ」の株式売却で2兆円規模の資金調達を目指している。先月29日に締め切られた売却の入札には、海外の競合企業や投資ファンドなど10社程度が応札。米ファンドや台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は2兆~3兆円の金額を提示したとみられる。
だが、売却交渉の行方は混沌(こんとん)としている。東芝の半導体メモリーは軍事転用可能な高い技術力があるため、政府は中国と関わりが深い台湾企業などへの売却に難色を示す。政府の横やりで制約が生じれば、金額だけで売却先を決められない難しさが出てくる。
6日には米国の調査機関が台湾の半導体メーカーの特許を東芝の半導体メモリーが侵害している恐れがあるとして、関税法に基づく調査を始めた。特許侵害と判断されると東芝メモリの価値に響き、高値売却の足かせになる懸念もある。
生命線の銀行支援も緊迫する。内部統制の問題が露呈、東芝メモリの売却でも不確定要素が残る東芝の信頼は揺らいでおり「体力のない地銀が融資を引き揚げる動きが出そうだ」(銀行関係者)という。(万福博之)