国をまたぐ不正防止へ多数国間条約
3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、6月7日に「税源浸食と利益移転(BEPS)防止に向けた租税条約に関する措置実施のための多数国間条約」の第1回署名式が行われることが決まった。これにより、9月から経済協力開発機構(OECD)の共通報告基準(CRS)に基づいた金融口座情報の初回の自動的交換が開始される。
これは「パナマ文書」でも問題になったタックスヘイブン(租税回避地)利用を防止し、各国が適正な課税を行うための国際協力の始まりを意味する。また、来年9月までにCRS基準を満たし、自動交換ネットワークに接続しない国や地域には何らかのペナルティーが課せられることが決定している。
日本では今年の確定申告から罰則はないもののマイナンバーの提出が義務付けられた。マイナンバーはCRS基準を満たすために必要なもので、本人を特定するための方法の一つだ。従来、日本の場合、戸籍と住民票という2つの確認手段があるが、うまく連動していなかった。これを一本化し人物を特定するのがマイナンバー制度である。
また、外国人には戸籍や住民票がなく、市町村単位で管理しているに過ぎなかった。この問題に対処するため、2012年に在住外国人の住基台帳制度を開始し、国による外国人の番号管理を開始した。実はマイナンバー制度は国際社会からの要請によるものでもあった。そして、租税情報の自動交換が開始されることで、多重国籍を利用した犯罪や脱税もあぶり出されることになっている。