◆イメージアップ
ヤマチュウは1953年、豆類の卸売業からスタートした。小麦など扱う商品も徐々に増え、業績も順調だった。そんな山本社長が流通業から製造業に進出したのは、小麦や穀類の十勝のイメージを高めようと一念発起したからだ。
「“十勝のイメージ”をアンケートした結果、スイーツ、乳製品、豚丼などが上位になり、生産量が日本一の小麦や小麦製品、小豆など豆類などは名前すら出てこない」。地域の知名度を上げ、地域への愛着を持ってもらうには、どうすべきか。
悩んだ末に山本社長が出した答えが、11年の製粉工場「十勝☆夢mill」の建設だ。「国内最大の小麦産地に加工工場がないのは不思議だ。原料の小麦を小麦粉に加工するだけでも付加価値を高められる」
さらに同年には、食品加工技術の向上に貢献するためにと小麦生産者、製パン業、パスタ、ピザなどを出すレストラン、消費者らで「十勝小麦・小麦粉連合」を設立、加工技術、調理技術、レシピの開発などを手掛けた。食に対して、まったく立場が異なった人々の交流が、この地で生まれた十勝産100%の小麦粉、食材などを活用した「オール十勝商品」を創出するベースになった。
以前道産の小麦は、うどんに使う中力粉品種の栽培が大半で、パン用品種は多くはなかった。12年に事業協同組合として設立された生産者団体「チホク会」を中心に、北海道農業センターが品種改良、試験種苗で開発したパン用小麦を、共同で育苗・栽培して増産につなげた。
山本社長には日本一の生産量を誇る「十勝小麦」を地域ブランドにして経済の起爆剤にするという夢がある。「十勝のワイン、チーズ、牛肉、豚肉、海産物などの豊富な食材とマッチングさせ、小麦や小麦粉の文化を発展させたい」と全国への発信を続けている。(川端信廣)