「経営陣の数字はもう信じられない」
東芝は3月29日、米国の原子力子会社であるウェスチングハウス(WH)の米国連邦破産法11条(チャプターイレブン)をニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てた。同日の東芝の発表によると、裁判所による再生手続きの開始によって、東芝の「実質的な支配から外れるため、2016年度通期決算より当社の連結対象から外れることになります」としている(※1)。一方で、東芝がWHに対して行っている「親会社保証」を完全実施した場合の貸し倒れ引当金などを見積もった結果、通期決算の最終損益は1兆100億円の赤字になる「可能性がある」とした。もちろん日本の事業会社として前例のない過去最大の赤字である。
昨年末にWHに巨額の損失が発生していることが明らかになって以降、綱川智社長は「米国の原子力事業のリスクを遮断する」と強調してきた。決算期末ギリギリに破産法11条の申請に持ち込んだのも、これによってWHを連結決算から外せば、東芝が泥沼に引きずり込まれる事態が回避できると考えたからだろう。東芝の社内に対しても、「1兆円はあくまで最悪の数字で、WHの再建策がうまくいけば、損失は小さくなる」と説明しているようだ。