冬を見据えた大手タイヤメーカーのスタッドレスタイヤ商戦の火蓋が切られた。保有率が高まる中、各社はブレーキ性能などを向上させた新製品を相次いで投入する。一方で、主要原材料の天然ゴムや合成ゴムの価格高騰を受け、各社は夏用に続き冬用タイヤを値上げする状況に追い込まれた。小売価格に転嫁されれば家計圧迫の要因となり、普及にブレーキがかかる恐れもある。
「ブリザック」で知られるブリヂストンは20日、乗用車用新製品「VRX2」を9月1日に発売すると発表した。すべりの原因となる氷上の水膜を除去する独自技術「発泡ゴム」を進化させ、従来製品と比べ氷上ブレーキ性能を10%、タイヤを摩耗しにくくする機能を22%向上させた。
「アイスガード」を展開する横浜ゴムも9月1日に新製品「6」を発売。新開発の吸水ゴム技術などの採用でブレーキ性能を氷上で15%、ぬれた路面で5%向上させた。日本ミシュランと日本グッドイヤーも新製品を8月1日に発売する。
ブリヂストン子会社のブリヂストンタイヤジャパンの調べでは、東京都と愛知県、大阪府の3都府県で一般消費者のスタッドレスタイヤの保有率は平成9年に11%だったが、現在は31%に増加している。
「突然の降雪や道路の凍結に備えたい」という消費者の意識の高まりが背景にあるという。各社は需要のさらなる掘り起こしを図るが、懸念材料となるのがタイヤの値上げだ。
天然ゴムや合成ゴムの価格が、中国などでの旺盛な需要を背景に高騰。ブリヂストンは乗用車・バン向けの冬用タイヤの出荷価格を夏用と同じく平均6%引き上げる。冬用の乗用車向けでは、横浜ゴムが5%、住友ゴム工業も6%、東洋ゴム工業も5.5%値上げする。