NHK31歳女性記者が長時間労働で過労死 「選挙取材など組織全体の問題」 労基署が労災認定

NHK放送センター=4日夜、東京・渋谷
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 NHKは4日、平成25年7月に首都圏放送センターの記者として勤務していた佐戸未和さん=当時(31)=が心不全で死亡したのは長時間労働による過労死だとして、26年5月に渋谷労働基準監督署が労災認定していたと発表した。

 NHKは佐戸さんの過労死を公表しないまま、電通の過労自殺事件など過労死問題を報道していたことになり、公共放送としての姿勢が問われそうだ。

 NHKによると、同局の記者はみなし労働時間制をとっているため、制度上の時間外労働はないが、労基署の認定では、佐戸さんが亡くなる直近1カ月の時間外労働は159時間に上った。

 佐戸さんは17年4月に入局。22年から首都圏放送センターに所属していた。死亡当時は東京都庁を担当しており、25年6月の都議選や同7月の参院選を取材。参院選の投開票があった3日後の24日に死亡した。

 翌25日に連絡が取れないのを不審に思った知人が都内にある1人暮らしの佐戸さんの自宅を訪ね、死亡しているのを発見した。死亡前の1カ月の休日は2日だけだったという。

 NHKは4日夜、山内昌彦編成局計画管理部長らが東京・渋谷の放送センターで会見。「労災認定を重く受け止めている。個々人の問題ではなく、勤務制度や選挙取材体制など組織全体の問題」とした上で、「佐戸さんだけが突出した勤務時間になっていたわけではない」とも説明した。

 佐戸さんの遺族は当初、公表を望んでいなかったが、「再発防止につなげてほしい」との要請があり、今回の公表に至ったという。

 佐戸さんの過労死認定を受け、NHKは「働き方改革」に着手。報道に携わる全職員へのアンケートを行って課題を洗い出した上で、今年4月から記者を対象に「専門業務型裁量労働制」を導入した。「より健康を重視した制度」(山内部長)という。

 また、この件で佐戸さんの上司らに対する社内処分などはなかったとしている。