【高論卓説】「ネットで全文公開」に注目 出版界の新潮流 「紙」販売にも効果 (1/3ページ)

 本を売るためには、本を全く読まない無読者層にどのように訴えるかが重要だ。本を読まない人もウェブメディアのテキストは読んでいるのだとすれば、全文を無料公開すればどうなるか。

 そんな考えのもと、一部だけでなく、新刊書籍の本文を「全文公開」してしまうプロジェクトが注目を集めている。今年1月、まだまだ市販で売れている最中に、お笑いコンビ、キングコングのツッコミ担当、西野亮廣さんの絵本『えんとつ町のプペル』を全文公開したことがその端緒。「発売元である幻冬舎や(絵本作家としても活躍する)西野氏が所属する吉本興業の上層部に確認すると反対される恐れもあることから、現場関係者による判断で決行した」(『編集会議』2017年秋冬号より)という。

 確かに、無料公開をしてしまえば、誰も絵本を買わなくなってしまうのではないか、あるいは既に買った人が怒り出すのではないか、という心配はもっともだ。ところが、この全公開プロジェクトはネット上で話題になると同時に、絵本の販売にも拍車が掛かった。著者にとっても出版社にとっても、「多くの人に読んでもらうと同時に、紙の本もこれまでより売れる」のであればこんなにいいことはない。『えんとつ町のプペル』の成功をみて、発売前の小説を全文無料公開するなど、新しいムーブメントを起こすことにもなった。

そしてそのムーブメントは、ビジネス書にも及んだ