□ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一
■「面白さ」とは「本能的興味」をくすぐること
パチンコは射幸性を有する娯楽である。しかし、「パチンコの面白さ」という観点からは射幸性は一つの要素にすぎない。パチンコという娯楽の根本的な面白さは年齢や性別に限定されないというのが筆者の考えだ。
具体的には、玉がくぎに行く手を阻まれながら当たり穴を目指して落下するという様子。筆者は小学校の時、粘土で似たようなものを作って遊んだ記憶がある。駄菓子屋の店頭で十円玉をパチンコのようにはじいて当たり穴に入れるというゲームに興じたこともある。自分の手で直接に当たり穴に入れるというのでは全く面白みがなく、くぎやハズレ穴という障害物があることをあえて楽しんでいたのかもしれない。
また、近年のパチンコ機の大半は3桁の数字をそろえる「セブン機」だが、これにも同じことがいえる。(パチンコに限らず)3桁の数字が回転している光景を街中で見れば、大半の人がどのような数字で停止するのか気になるのではなかろうか。
このような反応は、テレビで落とし穴に向かって歩いてくる芸人のその後を見たかったり、風船を限界まで膨らませているシーンを見ると「割れるまで見たくなる」というような、人間の本能的興味と大きく関係しているのではないかと思う。
パチンコはどれだけテクノロジーが進化しても、このような人間の本能的興味から遠ざかるべきではない。本能的興味をくすぐる遊びであるからこそ、より多くの人々がこれに興じてくれる。射幸性を有する娯楽だからといって、仮にその射幸性の強さばかりを業界が追うならば、プレーヤーは次第に一部の層に限定されていくことになるだろう。
「遊びやすいパチンコ機」への取り組みがかなり進んできた業界の現状だが、プレーヤーの金額的負担を軽減しても、本能的興味とのリレーションが弱ければパチンコ本来の面白さは十分に生かされない。「デジタル社会」と言われて久しい現在、パチンコがあえてアナログ的な面白さを大切にすべき理由がそこにあると考える。
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【プロフィル】岸本正一
きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。