【遊技産業の視点 Weekly View】「健康寿命」を延ばす機会を提供


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 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 昨今、「健康寿命」という言葉をよく耳にする。これは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義され、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱して以来、日本でも寿命を延ばすだけでなく、いかに健康に生活できる期間を延ばすかに関心が高まっている。

 厚生労働省の資料によれば、10年の平均寿命は男性が79.55歳で女性は86.30歳、健康寿命は男性が70.42歳で女性が73.62歳。いまや男女共に平均寿命は80歳を超えているが、平均寿命が延びるなか、その延び以上に健康寿命を延ばすことは、個人の生活の質の低下を防ぐ観点からも、社会的負担を軽減する観点からも重要となる。

 前回のコラムでは、市場の維持・活性化の視点から「高齢者客と“未来の価値”を創造するのは、これからの高齢者の遊技を促す環境構築に向け、有効な試み」と書いたが、“少子高齢化社会が抱える課題の解決”という視点からも、「社会における重要課題に、産業としてソリューションを提供すべくアプローチを試みる」ことになる。つまり、この視点に立った活動は、社会における産業の存在意義の強化および遊技業界関連企業のCSVの取り組みへとつながっていく。

 パチンコホールに出かける行為自体が「外に出て歩く」という健康寿命を延ばすきっかけになるのだが、パチンコ・パチスロ遊技が認知症予防に有効との報告もある。例えば、メーカーは認知予防のトレーニングを意識した遊技機を提供したり、パチンコホールでは、そのような遊技機の導入に加えて、高齢者が健康的に長くパチンコホールに通い続けることができるよう、休憩コーナーの一部などを利用して健康寿命を延ばすために役立つ情報を大きな字で掲げたり、地域の自治体が提供する健康寿命に関するイベントの開催を告知したり、さらには開店前に、駐車場を利用して地域の高齢者に向けた健康体操の時間を設けるのも有効だ。また、これらを通じてスタッフと交流が促されることで、より安心して“この場所”を訪れる環境の実現や、地域における高齢者の見守りも期待される。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。