【講師のホンネ】読むだけで元気になる本 大谷由里子

 読むだけで禁煙できる本、「禁煙セラピー」。この本を世に送り出した出版社がKKロングセラーズ。「読むだけで元気になる本」というテーマから、私も執筆のチャンスをいただき「元気セラピー」という本になったのが2007年。この春、2度目のリニューアルとなった。

 よく「大谷さん、書かれた本の中でどれがおススメですか?」と尋ねられる。私は「どの子供がいちばんかわいいですか?」と尋ねられるのと同じ(笑)。どの本もかわいいし、思い入れがある。ただし、どう思い入れたか、どんな人に読んでほしいかは、本によって異なる。

 この「元気セラピー」は、27歳で起業した当時のエピソードに始まり、会社が大きくなり仕事が増えると、家庭と育児と仕事のバランスがまったく取れない。そんな私に世間は冷たい。母親は「子育てして当たり前」「ご飯を作って当たり前」社長は「仕事に責任持ちヤリ切って当たり前」。そんな「当たり前」に私は潰されそうになった。睡眠時間を削り、周囲に気を使って、誰にも認められない。そんな毎日に生きているのさえ嫌になったことを思い出す。何もかも放ってどこか遠くに行きたくなった。

 そんな時に阪神淡路大震災に遭う。一瞬にして命を奪われた人たち。変わり果てた町を見たときに、むなしさばかりが募った。自暴自棄にもなった。そんな時に私を救ってくれたのは、学びであり、考えるということだった。自分と向かい合うということだった。仕事もお金もなくて、時間だけあった私は学ぶということにのめり込んだ。そして、学んだことを実践しているうちに自分を取り戻していった。「落ち込んだとき、苦しい時に、読んで元気になる本をこの世に残したい」。そういう熱を込めて書かせていただいたのがこの「元気セラピー」だ。

 コーチングのエッセンスを分かりやすくちりばめ、問いかけを設けた。私自身の経験や講演の内容も盛り込まれている。そんな本を作ってくれたKKロングセラーズにとても感謝している。そして、何よりもこの本をロングセラーにしてくれた読者の人たちに感謝している。

 これからもとことん、心の元気にこだわり続けて生きていきたい。

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【プロフィル】大谷由里子

 おおたに・ゆりこ 奈良県生まれ。1985年吉本興業入社。横山やすしのマネジャーを務め、宮川大助・花子など、タレントを次々と売り出した「伝説の女マネジャー」として知られる。2016年3月、法政大学大学院・政策創造研究科を修了。「笑い」を用いた人材育成法は、NHKスペシャルなど多くのメディアで話題となっている。