【プロジェクト最前線】フジッコ「減塩ふじっ子塩こんぶ」

「そのまま」のおいしさをアピールする減塩ふじっ子塩こんぶ
「そのまま」のおいしさをアピールする減塩ふじっ子塩こんぶ【拡大】

  • 「塩こんぶを知らない世代に新しいものとして受け入れてもらいたい」と話すフジッコの山下正義さん
  • やわらかく炊き上げた後、じっくりと乾燥させる

 ■暑さ対策やスイーツのお供で市場開拓

 ご飯をおいしく食べられる「お供」の一つが塩こんぶ。フジッコ(神戸市)は、半世紀以上にわたるロングセラー商品「ふじっ子塩こんぶ」の減塩タイプで、夏の暑さ対策やスイーツのお供といった新しい食べ方を提案している。狙いは塩こんぶを知らない若い世代。素材をそのまま味わってもらう販売促進戦略で市場を開拓する。

 ◆ミネラル補給に最適

 フジッコが暑さ対策を突破口にしたのは、汗を流して排出されたミネラルの補給に塩こんぶが適していることに着目したからだ。素材の昆布には、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれており、カルシウムにおいては牛乳の6倍もある。昆布を研究している同社研究開発部の紙谷年昭さんは「スポーツ時の暑さ対策として、水分と一緒にとるという活用法もある」と指摘する。

 フジッコは2013年から、後援していたマラソン大会のエイドステーションで走者に塩こんぶを素材のままで提供。口コミで塩こんぶが広がりつつあったが、認知度は低かった。

 昨年春に塩こんぶ担当のブランドマネージャーに就任した山下正義さんは、市場分析に取りかかった。減少傾向だった塩こんぶの出荷実績は15年度を底に上昇に転じ、17年度は前年度比8%増。ご飯のお供としてだけでなく、野菜などと組み合わせる調味料的な使われ方が浸透し、スーパーで業務用の大容量商品が売れるようになったからだ。

 フジッコは昨年10月、和田山工場(兵庫県朝来市)に塩こんぶ専用の新工場棟を完成させたばかり。昆布や豆、ヨーグルトなどの全商品のうち、塩こんぶの売上高は5%ほどだが、これから伸びる商品として社内の期待は大きかった。

 しかし、購入者は昔から塩こんぶに親しみのある中高年の割合が高く、このままでは先細りが避けられない。新たな購買層の開拓が求められていた。

 セオリーの販売促進策としては、その食品を盛り込んだ新メニューの考案がある。だが、山下さんは「塩こんぶを知らない世代も登場する中、手軽に健康が得られる食品であることを知ってほしい」と考えた。

 そもそも、ふじっ子塩こんぶは、北海道産の黒色で肉厚の昆布を原料に着色料や人工甘味料は使用しておらず、「こだわりの味と食感には自負がある」(山下さん)。そこで、昆布のうま味がより味わえる減塩タイプで、「そのまま食べる」スタイルを訴求しようと決めた。

 まずは、運動時のミネラル補給に塩こんぶを摂取することを新習慣として提案した。スポーツチームや部活動などを対象に、抽選で商品をプレゼントするプロジェクトを3月から始めた。6月には、中・高校生の部活動を対象にしたプロジェクトを始める。

 ◆若い世代に訴求

 また、都内のドラッグストアでは今夏、暑さ対策の商品として、子供向けヘルスケアコーナーの棚に並べられる。同店の薬剤師は「水分補給のときに、スポーツドリンクだと糖分が気になるし、水だけではミネラルが足りない。減塩塩こんぶをミネラル補給としてとることは新発見だった」と話す。

 塩こんぶを水やお茶にそのまま入れて飲料としても活用できる。本格的な夏の暑さ対策が手軽にできる点は、塩こんぶの普及に追い風となりそうだ。

 もう一つ、山下さんが若い世代に伝えたいと考えているのは、和菓子などの甘味に塩こんぶを合わせる箸休めとしての食べ方「甘じょっぱスタイル」だ。同僚の営業担当が今年に入り、スーパーの販促イベントなどで和菓子やたい焼きと一緒に塩こんぶを提供したところ、20代以下の男女から「新しい」という感想が寄せられた。

 山下さんは「今年の夏はアイスと塩こんぶの組み合わせを提案したい」と意気込む。

 フジッコは、塩こんぶ関連商品の売上高を21年度までに17年度比1.6倍となる50億円と設定しており、山下さんは日本の食文化としての塩こんぶの普及に力を入れていく。(鈴木正行)

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 ≪焦点≫

 ■やわらかな食感にこだわり

 フジッコの塩こんぶの特徴は、素材の昆布のやわらかさにある。こだわっているのは、炊き上げたときの塩こんぶの食感だ。

 塩こんぶ担当のブランドマネージャー、山下正義さんは「約20年前に製造に携わった担当者からは、昆布を炊くときに砂糖を使用すると、仕上がりが固くなってしまう。人工甘味料を使わず、やわらかく炊き上げることが最大の課題だったと聞いています」と話す。

 そこで、機械メーカーと一緒に特別な装置を開発。昆布がつぶれたり、切れたりせずに極限までやわらかく炊き上げることができるようになった。

 ところが、この製法は塩こんぶを粒状にカットしてボトルに入れた新商品「ふりふり塩こんぶ」(2018年3月発売)では、大きな壁となった。「やわらかい塩こんぶは粘りけが出てしまい、カット刃にくっついてしまう。やわらかさを保持したまま短く切るというのは高い技術が必要だった」(同社)。試行錯誤の結果、新しい機械を使用することで克服した。

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 ■フジッコ

【本社】神戸市中央区港島中町6-13-4

【創業】1960年11月7日

【資本金】65億6600万円(2018年3月31日現在)

【売上高】629億円(連結、18年3月期)

【従業員数】2147人(17年3月31日現在、グループ全従業員)

【事業内容】各種食品の製造販売