【株式ニューカマー】国際紙パルプ商事 海外強化・事業領域拡大狙い上場


【拡大】

 □国際紙パルプ商事・田辺円社長

 創業から100年近い歴史を持ち、国内トップ級の紙・板紙の卸販売を手掛ける国際紙パルプ商事が6月26日、東証1部市場に新規上場した。国内の紙需要は縮小傾向にあるが、世界では拡大している。世界に打って出るとともに、環境に配慮した循環型ビジネスの育成に注力する。田辺円社長は「社会から必要とされる企業として成長を続けていく」と抱負を語る。

 ◆循環型を推進

 --なぜ、いま上場したのか

 「会社の潜在能力を高めるとともに、資本政策を多様化することで資金を調達し、海外進出を強化するためだ。またM&A(企業の合併・買収)を推進して事業領域も拡大していく。これらを遂行するために上場が必要だと考えた。社員の仕事に対する意欲を喚起することも理由の一つだ。私が社長に就任した5年前から公言し、準備してきた。当社は何度かのM&Aを繰り返してきたが、今回の上場を第2の創業と位置付けて社内の一体感を強めていく」

 --業績の推移は

 「売上高は直近6年間で堅調に推移している。一方、経常利益は2015年3月期から17年3月期まで3カ年連続で減益だった。しかし、海外拠点の再編など構造改革が一段落したことで、18年3月期の経常利益は前期比約2.8倍と急回復している。19年3月期には引き続き海外での拡販に取り組み、増収となる見込みだ」

 --事業の強みは

 「1200社の仕入れ先、2500社の販売先という、国内最大級のネットワークを有して経営基盤は安定している。特に競合他社との差別化のポイントとなっているのが、循環型ビジネスモデルを推進していることだ。市場から製紙原料である古紙を回収して製紙メーカーに販売している。これに加えて昨年4月から廃材や未利用木材などをバイオマス燃料として熱エネルギーに代えるサーマルリサイクルをスタートさせている」

 ◆アジア市場へシフト

 --海外展開の方針は

 「国内の紙市場が縮小傾向にあるのと比べ、世界の紙消費量はリーマン・ショック以降、7年連続で成長している。その原動力となっているのがアジア市場だ。新興国では経済成長に伴い、生活水準の向上により拡大を続けている。紙・板紙の1人当たりの年間消費量は、欧米では約200~300キロだが、開発途上国では10キロ程度の国・地域も多い。当社では海外の売上高比率はここ数年順調に上昇しているが、その中でも市場の潜在力の高いアジア市場へのシフトが進んでいる」

 --企業をどう成長させていくのか

 「これまで紙・板紙卸販売のリーディングカンパニーとして業界をリードしてきた。今後も循環型ビジネスを軸として、成長を続けていきたい。24年には創業100周年を迎える。それまでに年率4%の売上高成長を続け、アジアでトップの紙・板紙の卸販売事業者になることを目標としている」

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【プロフィル】田辺円

 たなべ・まどか 亜細亜大商卒。1971年大同洋紙入社(現・国際紙パルプ商事)、常務、専務、副社長を経て、2013年6月から現職。69歳。北海道出身。

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【会社概要】国際紙パルプ商事

 ▽本社=東京都中央区明石町6-24

 ▽設立=1924年11月

 ▽資本金=34億4278万円

 ▽従業員=673人 (2018年4月1日時点)

 ▽売上高=3828億3500万円 (19年3月期予想)

 ▽事業内容=紙・板紙などの卸販売