大手電機で大幅な人材不足 先端IT技術者育成を加速

 大手電機メーカーが、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどに精通した技術者の育成を急いでいる。こうした先端ITに習熟した人材が大幅に不足しており、外部からの採用だけでは追い付かないためだ。

 日立製作所はグループの育成プログラムを整備し、ビッグデータを解析する「データサイエンティスト」を、現在の700人から2021年度までに3000人に増やす方針だ。主力事業である鉄道などの運用技術のほか、AIの要件も加えた独自の認定制度を設ける。

 日立は、高度なデータ分析による消費者の需要予測や生産現場の課題解決といった提案型サービスを強化している。

 富士通も社内教育を強化しており、AIの専門技術者を18年度中に1500人に拡充する。約2年前は700人だった。

 NECは20年度までにAIに関わる中核的な人材を現在の約1.4倍の1000人に増やす。若手も活躍できる研究拠点を米国に設置した。新野隆社長は「(研究を)事業化できる会社ということを見せていきたい」と人材育成を加速させる考えだ。

 7月からはソニーがロボット研究の第一人者である大阪大の石黒浩教授を非常勤研究員に招請。東芝もIoT強化を目的に日本IBMから幹部を招くなど人材の争奪戦も激しい。電機メーカー関係者は「AIなどは自動車メーカーをはじめあらゆる業態が強化しており、簡単には優秀な人材を獲得できない」と嘆く。

 経済産業省は、国内の先端IT人材が18年時点で約3万2000人不足していると推計した。20年には不足数が約4万8000人に拡大するという。

 IT大手ワークスアプリケーションズ(東京)の牧野正幸最高経営責任者(CEO)は「日本のデータサイエンティストの人材数は世界の上位10位に入れない」と警告。大学と企業が連携した育成が急務だと訴える。