【遊技産業の視点 Weekly View】地方に見るパチンコホールの役割


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 □ホールマーケティングコンサルタントLOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 先日、全国的に有名な温泉地へ旅行した。最寄りの空港からリムジンバスに乗車すること50分。到着した地元のメインストリートにある2軒のパチンコホールのうちの1軒に立ち寄ると、都市部で生活する筆者が抱いている現在のパチンコ業界のイメージとはかけ離れた世界がそこにはあった。

 まず驚いたのが、そのにぎわい。特に高齢者の姿が多く見受けられ、女性比率がかなり高い。また、車いすで遊技している客も数人確認された。都市部では、1000台クラスの巨艦店でも車いすで遊技する人の姿を目にすることはまれだ。しかしながら、このホールの設置台数は約480台。そこに車いすでパチンコに興じる客が数人いるというのは、極めて珍しい光景に映った。

 ご存じない方のために補足しておくと、車いすのままパチンコをするためには、もともと設置されているいすを「取り外す」か「移動」した上で、そこに車いすを進入させなければならない。よくある例としては、通路の一番端の台だけが移動できるいすとなっており、そこで車いすで来店した客が遊ぶというパターンだ。しかしこの場合、車いすで来店した客が選択できる台は(端の台に)限定されてしまう。だが、この温泉地のパチンコホールでは端の台に限定されることなく希望する場所で遊んでいるようにうかがえた。おそらく、これがこのホールにおける日常の光景なのだろう。いすの取り外しや移動、顧客の誘導など、スタッフの配慮が日頃から行き届いている証しと筆者は受け取った。

 われわれのようなネット世代は、スマホやPCを使ってSNSでコミュニケーションをとることに慣れており孤独感をそれほど抱かない。しかし、そうではない地方の町の高齢者にとっては、パチンコという身近な遊びに興じることのできるパチンコホールが、ある種のコミュニティーとしての役割を果たしている可能性が高い。このパチンコホールを見て、その思いは確信に変わった。それと同時に、パチンコの存在意義やその価値を「ひとくくり」で語ること、また1つの側面だけを取り上げて評価することが、いかに危ないことであるかを痛感した。

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【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。