□ワールド・ワイズ・ジャパン代表 LOGOSプロジェクト主幹 濱口理佳
世界保健機関(WHO)。その国際疾病分類(ICD)において、ギャンブル依存症はICD-10では精神疾患のなかの依存症の1つに分類されていたが、6月18日に公表されたICD-11では、これらを含むゲーム障害が疾病に認定された。
これについて現在、ゲーム業界を中心に、対応に向けた動きが確認される一方、その是非についてさまざまに意見が交わされている。さらに9月21日、WHOはアルコールが原因で、世界で毎年300万人以上が死亡しているとの報告書を発表し、各国にアルコールの税率を上げるなどの対応を急ぐよう警告したという。世界の医療や保健事情に詳しくない私のような一般人の目線では、そもそもWHOといえば、伝染病の撲滅や感染症の抑止に向けて世界的に取り組む組織というイメージが強かった。だが振り返れば、2011年には世界の年間死亡者数約5700万人のうち、成人の約10人に1人が喫煙で死亡していると報告し、喫煙習慣に対して警鐘を鳴らすなど、何やら「健康な生活の実現」を前提に「いわゆる病気」にとどまらず、タバコや酒といった大人の嗜好(しこう)品、加えてギャンブリング障害やゲーム障害という趣味に至るまで、あらゆる側面から「健康な生活」を妨げる可能性が指摘されるものを問題視し、排除しようとしているように感じる。医学研究や統計調査のための疾病分類は確かに有用だし、心身ともに健やかに生活できる環境の実現は重要だ。しかし誰1人同じ人間がいないように、人それぞれ健康に対する価値観も、それを実現する手段も異なるはず。WHOの価値観を全ての人や国に押し付けることが時代にふさわしい行動とは思えない。