今年のノーベル物理学賞は青色発光ダイオード(LED)を発明した赤崎勇・名城大教授、天野浩・名古屋大教授、中村修二・米カリフォルニア大教授の3人が受賞した。「21世紀で最高の発明」とまでたたえられる画期的なイノベーションだが、見逃せないのが日本企業とこの発明の重要な関わりだ。
「夢の技術」とされた青色発光を実現するための半導体には、窒化ガリウムとセレン化亜鉛という2つの選択肢があった。そのうち、より加工が難しく、きれいな結晶にしにくい窒化ガリウムを選ぶ研究者は少数派だったが、こちらが正解だった。
もともと赤崎氏は松下電器産業(現パナソニック)で、十数年にわたって窒化ガリウムによる青色発光の研究を続けてきた。だが、実現可能性が低いとみた上層部から中止を命じられて1981年に名古屋大へ移る。そこでの教え子である天野氏と試行錯誤の結果、85年に窒化ガリウムの高品質な結晶づくりに成功した。
まさにパラダイム破壊であったこの発見を基に高品質の結晶を量産できるよう道筋をつけたのが中村修二氏で、それが青色LEDの実用化への決め手となった。今回の物理学賞を共同受賞したのもそのためだ。