経営手法や製品・サービスの強みなど、企業競争力の源泉となる独自技術やノウハウをいかに秘匿しつつ知財戦略に活用するか。いわゆる営業秘密の保護・活用は、中小企業にとって十数年来の課題だが、その重要性の理解はいま一つ進んでいない。IoT(モノのインターネット化)など技術革新が新しいステージを迎える中で、官民での抜本的な対策が求められている。
営業秘密とは、企業が保有する秘密情報の中で不正競争防止法における「秘密管理性」「非公知性」「有用性」の3要件を備えるもの。具体的には特許などの出願公開による権利化をしていない、発明、図面、金型、試作品、開発データ、製造ノウハウなどが知財としての営業秘密に当たる。特許出願には1件数十万円の費用がかかり、中小企業は大企業のように多くの特許を取れないのが実情だ。このため営業秘密としての知財の保護・活用について理解することが重要になる。
現状について「一部の感度の高い知財活用型中小企業では情報漏洩(ろうえい)への認識があり対策をしているが、一般的には遅れている。自社情報を分析して秘匿すべき営業秘密を確定させる能力に欠ける」と国際知財コンサルタントは分析。下請け業務が主体の場合、自前の知財に対する意識が醸成されにくい根本的な課題もあるという。また情報リスク対策専門家は「営業秘密を言う前に企業の秘密情報管理対策が課題だ」とみる。パソコンやデータベース、ネットワーク、事務所、研究・生産施設の管理・監視体制の不備は20年来の課題と指摘する。