電通初公判 高橋まつりさんの母「社長の言葉を信じることはできません」

1月、沈痛な面持ちでコメントを読み上げる高橋まつりさんの母、幸美さん=厚労省
1月、沈痛な面持ちでコメントを読み上げる高橋まつりさんの母、幸美さん=厚労省【拡大】

 大手広告会社の電通の違法残業事件の初公判後、過労自殺した高橋まつりさん=当時(24)=の母、幸美さんは22日、記者会見で次のようにコメントした。全文は次の通り。

 「本日、公の刑事裁判で、電通が長年行ってきた社員に対する法律違反が明らかにされ、裁かれたことは、複雑な心境ですが、感慨深いものがありました。これまで捜査に当たられた労働局、検察官の方々に感謝いたします。また、裁判所が遺族の傍聴席の確保をしていただいたことに感謝いたします。

 検察官が、再三指摘されたように、電通は、社の利益を優先させ、是正勧告を何度も受けたにもかかわらず、労働時間を引き下げる対策をとらず、36協定の上限を引き上げたり、サービス残業をせざるをえない状況をつくりました。そして、深夜労働や休日労働をいとわない状況が続くなど、会社の認識の甘さとおざなりな対応があり、社員の精神的肉体的苦痛ははかりしれないものであった、との検察官の指摘は、本当にそのとおりだと思いました。

 電通の山本社長は、本日、公訴事実をすべて認め、反省とお詫びの言葉を述べ、新しい電通をつくるとの決意を述べておられましたが、今でも電通は、言葉では様々な計画を立て、文書もつくっていました。それを知っている遺族としては、にわかに今日の社長の言葉を信じることはできません。

 労働環境の改革計画を検討・実施していると表明されていましたが、娘が入社する前にも、電通は、立派な計画は発表していました。しかし、娘は、土曜日も日曜日も休むことができないほどの業務を担当させられたのです。立派な計画や制度を作ったとしても、本当に実行しなければ、意味がありません。

 電通の職場が改善するには、社長をはじめ、役員を先頭にすべての従業員が強い意志をもって取り組んでいただきたい。それには、株主、クライアント、日本全体の意識が変わらなければならないと思います。

 電通の取り組みを今後も監視していきたいと思います」

■電通社長「責任感じる」「心からおわび」 初公判で起訴内容認め謝罪 罰金50万円求刑 を読む