百舌鳥・古市の両古墳群は大阪府内の約10キロ離れた場所にあり、推薦対象の古墳も計49基と多数に上る。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は世界遺産の審査を厳格化し、価値の明白なものに登録を絞り込む傾向を強めており、ユネスコに求められると想定される「一体的な価値」を自治体と国がどう説明するかが鍵になる。
仁徳天皇陵古墳(堺市堺区)近くの市博物館は昨年8月からバーチャルリアリティー(VR)技術を使い、百舌鳥古墳群を上空から眺めているような映像が見られるサービスを始めた。仁徳天皇陵をはじめとする巨大古墳は地上からだと全体像が見えないが、「VRだとよく分かる」と好評だ。古市古墳群(羽曳野市、藤井寺市)のVR映像も作成し、提供を始めている。
両古墳群の構成資産の古墳は多くが整備が進んでいなかったり宮内庁管理だったりするため立ち入りができない上に、樹木で覆われており、訪れても古墳の形がわかりづらい。また両古墳群は大阪府南部の3市にまたがり、直接行き来する公共交通機関がなく、古墳めぐりが難しい。
こうした課題を解消し、いかに一体感をつくれるか。地元自治体は急ピッチで取り組みを進める。
堺市は今年度末に百舌鳥古墳群の整備計画を策定する。平成34年度までに構成資産にもなっている寺山南山古墳(堺市西区)について、通路を整備して墳丘上に登れるようにするほか、ほかの古墳も墳丘上の樹木を間伐するなどして古墳の形をわかりやすくする。