【生かせ!知財ビジネス】バード&バード法律事務所・道下理恵子弁護士に聞く


【拡大】

 ■日本企業は中国訴訟対策を急げ

 中国国家知識産権局によれば、2017年の知的財産権関連民事訴訟の新規受理件数(1審)が、前年比47%増の20万1039件と20万件を突破した。超訴訟大国の中国に対応するため、日本企業は何をすべきか。中国知財問題に詳しいバード&バード法律事務所北京事務所パートナー弁護士の道下理恵子氏に聞いた。

 --17年度の日本は692件にすぎない

 「中国では3年前(14年)の新規受理件数は9万5522件だったが倍増した。もともと異常な件数だったが事態はさらに深刻だ。何か一つでも中国関連の商材を出している全ての企業は、中国での訴訟にいつでも巻き込まれる時代に入ったと認識しておく必要がある」

 --日本企業関連の訴訟はどのくらいあるのか

 「訴訟の9割は中国企業同士の訴訟で、日本企業関連は全体の2%もない。しかし、外国企業に巨額賠償金を求める判決が近年出されたことに加え、日本企業は訴訟に消極的であることはよく知られている。今後、日本企業が中国企業から訴えられる件数が増えるだろう」

 --日本企業は過去、米国の巨大訴訟やNPEs(特許不実施主体)訴訟などで苦労した経験があるはずだ

 「中国は欧米とは事情が違う。ただ経験を生かせるはずなのに海外訴訟経験者を中国対応に置く日本企業は少ない。日本企業の知財や法務担当者の多くは中国の知財や訴訟の制度について一般的知識は学んでいるが、訴えられる立場での対策の知識や経験は乏しい。中国企業は勝てそうだと思った瞬間、準備もなく突然訴える。工場や事務所だけでなく、取引先にも行政摘発(行政機関を使った公的救済)をいきなり仕掛けて揺さぶってくる」

 --事が起きてからでは遅すぎるということか

 「訴訟に直面したとき、戦略立案と同時に各部各担当が自動的に粛々と行うべき事柄が数多くある。現地の訴訟実務に詳しく、自社の実情に合った専門家を探すだけでも相当時間がかかる。現場である中国の支社・関連会社、専門家に加えて、日本の本社、本部まで一丸となって連携し、万が一のときの対策や体制構築をできるだけ早く済ませておくべきだ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

                   ◇

【プロフィル】道下理恵子

 みちした・りえこ 中国人民大法卒。大手法律事務所を経て、2010年バード&バード法律事務所入所、15年からパートナー弁護士。神奈川県出身。