「電話がこれほど便利なものだとは知らなかった」「リアルタイムに通じるすばらしさを知った」。昨年から始まった日本財団(東京都港区)の聴覚障害者向け電話リレーサービスに続々と感動の声が寄せられている。同サービスは、聴覚障害者が手話や文字で伝える内容をオペレーター(通訳者)が訳して電話する。耳が不自由では電話を利用できない社会に一石を投じている。(村島有紀)
自分でやりとり
電話が使えないデメリットは大きい。電話を使う仕事に就けない▽病院や飲食店などの予約や問い合わせが簡単にできない▽クレジットカードなどをなくしてもカード会社などにすぐ連絡できない…。
こうした中、日本財団が昨年9月、手話通訳者や文字通訳者がいる事業者に業務委託し、試験的にリレーサービスを開始。ホームページ(http://trs-nippon.jp)とFAX(03・6229・5599)で受け付け、9月からの半年間に658人の聴覚障害者が登録し、1日平均63回、約11時間の利用があった。現在の登録者は約900人。
利用方法は、聴覚障害者がスカイプやライン、メールなどでオペレーターがいる事業者の事務所に連絡。オペレーターは相手に電話し、「聴覚障害者からの電話です」などと話し掛ける。オペレーターはビデオチャットで聴覚障害者と手話で対話し、電話の相手と聴覚障害者の会話を仲介する仕組み。パソコンなどに打ち込んだ文字情報を通訳してもらうこともできる。
茨城県つくば市の大学職員、管野奈津美さん(29)は手話と文字情報の両方で利用。「これまでは家族に頼んでいたが、自分で電話ができるようになった。相手とやりとりしながら思い通りに自分の意思を伝えられるのですごく便利」と話す。