「出退勤記録を実際より短くつけるよう、会社から指示されている」
今月4日深夜、東京と大阪で受け付けた「ブラック企業被害対策弁護団」の特別電話には、深刻な長時間労働や賃金不払いの相談が多く寄せられた。弁護団の大久保修一弁護士(第二東京弁護士会)は「以前は紛争になってからの相談が多かったが、今回は働き方に悩む20~30代の若年層からの相談が多かった印象だ」と明かす。
過労死問題に詳しい岩城穣弁護士(大阪弁護士会)は、過労死が社会問題化した1980年代後半より現代の方が対象は広がっているとみる。「昔は『24時間働けますか』に代表される30~50代の働き盛りの企業戦士が過労死した。しかし、90年代後半から終身雇用が崩れ、少人数で多くの仕事をするようになり、若い人の過労死や労働者の精神疾患が増えた」
仕事は無限にあるが、不況で転職も難しく辞められない。岩城弁護士は「労働基準法を守っていれば過労死は起きない。しかし実際は青天井で働かされ、残業代未払いも多い。上司や同僚も同じように過重労働しており、相談しても『一緒にがんばろう』といわれる」と話す。
厚生労働省が昨年末から今年にかけて行った調査では、残業が発生する理由として企業、労働者双方がもっとも多くあげたのが「顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要がある」だった。岩城弁護士は「一企業だけでなく、国が指導力を発揮して、業界全体で取り組まないといけない」と力を込めた。