薬の飲み残し、薬剤師が訪問指導 回収し再処方、医療費抑制と症状悪化防止に (1/2ページ)

飲み残しを防ぐため、服薬カレンダーや手作りの薬箱を用意する薬剤師の宮野広美さん(右)と小平幸恵さん=6月、埼玉県伊奈町
飲み残しを防ぐため、服薬カレンダーや手作りの薬箱を用意する薬剤師の宮野広美さん(右)と小平幸恵さん=6月、埼玉県伊奈町【拡大】

 医師から処方された薬を大量に飲み残す「残薬」。医療費の無駄遣いにつながるだけでなく、症状が悪化する恐れもある。どうすれば飲み残しを防ぐことができるか。薬剤師を中心とした取り組みが広がっている。

 約5割「つい忘れて」

 「薬、ちゃんと飲んでますか。水分とってる?」。埼玉県伊奈町のアパートの一室。薬剤師の宮野広美さん(59)と小平幸恵さん(49)が、この部屋に1人で暮らす男性(80)に話しかけた。男性は体調を崩して5月に入院。退院後も心不全や血圧などの薬7種類を処方され、毎朝1回服用するよう指示された。

 伊奈町などで調剤薬局を営む宮野さんは、主治医の依頼で訪問指導を開始。毎回飲む錠剤を分かりやすく1袋にまとめ、袋ごとに日付や「朝食後」と大きく印字。飲んだ後の空き袋を捨てずに指定した箱に入れるよう男性に頼み、訪問時に確認できるようにしている。

 「1週間前に訪れた時は2日分飲み忘れていたが、今回は大丈夫」と宮野さん。男性は「自分では時々分からなくなる。来てもらえて安心だ」

 埼玉県薬剤師会が高齢者ら150人を自宅訪問して調べると、全員に残薬があり、大量に見つかったケースも。最も多かった理由は「つい飲み忘れてしまう」(49.5%)で、「症状が改善した」「薬が多すぎる」などが続いた。

 特に高齢者は10種類前後の薬を長期間飲み続けなければならないことも多く、介護保険や医療保険の服薬指導を利用できる。宮野さんらは自宅やグループホームに住む患者計25人を担当。飲む時間ごとに手作りの薬箱に仕分け、目立つ場所に置くなど工夫する。「薬をどう飲んでいるかはその人の暮らしを見ないと分からない」

 薬の飲み残しは健康影響だけでなく「医療費の無駄遣い」との指摘もある。日本薬剤師会が75歳以上の在宅患者約800人を対象に行った調査では、飲み残しで無駄となる薬剤費は年間約475億円との試算が出た。薬剤費の自己負担は最大でも原則3割。残りは公的保険で賄われている。

70万円分の無駄を削減