【STOP!メタボリックシンドローム】脳梗塞など突然死予防


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 東大などのグループ、糖尿病合併症抑制で好成績

 肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と関係の深い2型糖尿病は、突然死に至る心筋梗塞や脳梗塞といった合併症につながるためきちんと治療する必要がある。世界的にも糖尿病患者が激増する中、それらの合併症を抑制する有効な治療法はこれまで明らかにされていなかったが、日本発の研究によって安全に、脳・心血管疾患を抑制できる可能性が出てきた。(山本雅人)

 生活習慣の改善重視

 研究を行ったのは、東大病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授と国立国際医療研究センター研究所の植木浩二郎糖尿病研究センター長らのグループ。

 平成18年から28年にかけ、全国81の施設で、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクとなる高血圧か脂質異常を併せ持った2型糖尿病患者2542人を2群に分け、片方には従来の日本糖尿病学会の治療目標を設定し、もう片方には、より厳しい目標を設定した強化療法を行ってもらった。

 従来治療群の目標は、過去1~2カ月の血糖の平均値であるHbA1cが6・9%未満、血圧が130/80ミリHg未満、悪玉のLDLコレステロールが120ミリグラム/dL未満。

 一方、強化療法群はHbA1c6・2%未満、血圧120/75ミリHg未満、LDLコレステ80ミリグラム/dL未満に設定した。強化療法の患者には、目標達成のため、薬物療法以外に運動療法として歩数を増やすよう目指し、食事療法として、その内容を記録し、振り返りを行ってもらった。

 その結果、平均8・5年の治療期間で、脳梗塞や心筋梗塞、死亡などに至った患者数(主要評価項目)が、強化療法群では従来治療群に比べ24%減少(喫煙状況などを加味し数値補正済み)、そのうち脳梗塞は58%も減少していた。また、合併症である腎症(腎臓病)が32%減、網膜症も14%減少した。

 世界初のデータ

 糖尿病患者に対しては、早期から血糖の値を下げる治療を行うと、合併症が抑制できることが既に分かっていた。

 だが、2008年に米国で発表された約1万人を対象とした研究では、薬剤主体で血糖を下げたところ、死亡率が1・2倍に増え、また、意識障害などにつながる重症低血糖が16%発生したため中止となった。

 一方、今回の研究では強化療法群の脳・心筋梗塞での死亡は1件もなく、重症低血糖も0・1%以下にとどまり、「安全に血糖を下げながら、脳・心血管疾患を抑制するという世界初のデータを、大規模研究の形で出すことができた」と門脇教授は語る。

 この研究は9月の欧州糖尿病学会で発表され、反響を呼んだ。今後、日本の治療目標が改定されたり、欧米の基準にも影響を与える可能性がある。

 今回の研究結果は、強化療法群の効果が目立つ形になっているが、従来療法群でも、それより約10年前のデータに比べ脳梗塞・心筋梗塞合わせた発症率は半分程度に抑えられているという。門脇教授は「患者さんには現行の治療目標をまず達成してほしい。もっと頑張れば合併症のリスクがさらに下がるということだ」と話している。

                   

 健康寿命延伸への国民課題

 今回の研究は厚生労働省の戦略研究として行われた。健康寿命を全うするための国民的な課題として、健常者より寿命が約10年短く、国民の約6人に1人が患者か、その予備群である糖尿病が、自殺とともに最初の研究分野に選ばれた。

 糖尿病分野では、課題となっている(1)予備群からの発症予防(2)かかりつけ医での治療中断者の減少(3)患者の脳・心筋梗塞といった合併症抑制-を目的とした臨床研究を実施。

 3番目の門脇教授らの大規模研究(J-DOIT3)は合併症の30%抑制を目標に、世界の研究者が注目していた。