【著者は語る】西田輝夫氏「70歳、はじめての男独り暮らし」


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 □医療法人松井医仁会大島眼科病院監事・西田輝夫氏

 ■残りの人生楽しく過ごすための工夫

 戦後のベビーブームの時期に生まれた世代がいよいよ70歳になりました。今日では、70歳の余命は男性15.7歳、女性20.0歳。医学の進歩、栄養状態・社会環境の改善や健康保険制度の充実などが進み、日本は世界で最も長寿を楽しめる国となりました。

 平均寿命の男女差は6歳もあります。一般に、夫婦のうち男の方が先立つものと考えられています。私も妻を残して私が先立つものと当然のように考え、それなりの準備をしていました。しかし、定年を過ぎ仕事から離れて残された人生を共に楽しもうとしていた矢先に、妻にがんが見つかり、私を残して先立ってしまいました。

 延命治療を断念してからの約半年間の妻は、見かけ上は元気でした。残される私のためにいろいろと準備をしてくれていましたし、私もそれなりの覚悟はしていたつもりでした。しかし、いざ妻が先立ち独りきりになってみますと、寂しさは思っていた以上に深いものでした。

 生きるためには食事を作ったり、洗濯をしたり、掃除をしたりと多彩な家事を自分でこなさねばなりません。周りにいる多くの方々に助けていただきながら、人生で初めて家事を行っていますと、私が仕事に思い切り没頭できるように支えてくれていた妻への感謝の気持ちが改めて湧き出てきました。

 現在の若い方々とは異なり、私たちの世代が働き盛りであった頃は高度成長期であり、家庭を顧みずにひたすら働くことが当たり前でした。逆に言えば、家事や育児は妻に任せきりという生活でした。今日の考えでは信じられない古い生き方かもしれません。でもその時代を生きた人間たちが、今、どんどんと70代になりつつあるのです。

 本書では、妻に先立たれて独り残された70歳の男が家事を身につけていく段階での失敗談や工夫と、その過程で学んだ「独りで生きるためのルール」に加えて、妻を失ってからの心の変化をありのままに綴(つづ)りました。同じような環境におられる方々のお役に立てば幸いです。寂しいけれど、でもしっかりと生きていかねばなりません。残された人生をより楽しく過ごすために。(1188円 幻冬舎)

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【プロフィル】西田輝夫

 にしだ・てるお 1947年生まれ、大阪府出身。医学博士。71年に大阪大学医学部卒業後、米国ボストンのスケペンス眼科研究所に留学。93年、山口大学医学部眼科学教室教授に就任。2010~13年、山口大学理事・副学長。現在は、医療法人松井医仁会大島眼科病院監事、日本アイバンク協会常務理事などを務めながら、妻が残してくれた知恵をもとに、懸命に独り暮らしの日々を送っている。