【サスティナブルにっぽん~茨城県】筑波山麓の里山で林業体験 有働文子

つくばね森林組合の協力を経て、近隣の山で行う「間伐・枝打ち体験」=NPO法人アグリやさと提供
つくばね森林組合の協力を経て、近隣の山で行う「間伐・枝打ち体験」=NPO法人アグリやさと提供【拡大】

  • 都内から来た高校生。薪割り体験に苦戦=NPO法人アグリやさと提供
  • 朝日里山学校
  • 有働文子

 筑波山の東、茨城県石岡市八郷地区はいちごや梨、柿などを代表とする果樹栽培が盛んな地域だ。そんな田園風景の中に、廃校を利用した体験型観光施設、朝日里山学校はたたずむ。

 10年4月から有機農業支援を行う「NPO法人アグリやさと」が運営にあたり、地元の農産物や自然、山林、歴史などの地域資源を活かしたプログラムを提供している。

 その1つ、「林業体験」の「丸太切り・薪割り」に挑戦してみた。アグリやさとの柴山進代表によると、薪割りには柔らかい杉や檜の木を使うため、初心者でもそれほど複雑な技術はいらないとのことだが、振り上げた重い斧を丸太の中心にまっすぐ振り下ろすのは一苦労。でも、東京から来た高校生たちも、薪が割れるまで何度も斧を振り、苦戦していたそうなので、少し安心。成功すると、いい香りが漂うのに気がついた。水分を含んだ新鮮な檜の断面は、ツヤツヤと輝きを放ち、神々しくさえ感じるほどだった。

 今回、私は個人で参加できる「丸太切り・薪割り」を選んだが、6~7人で班を作り、近くの山に入って細い枝をのこぎりで切っていく「間伐・枝打ち」がある。

 今年5月、千葉県浦安市内の中学校の60人が、地元のつくばね森林組合の協力を得て、間伐・枝打ちを体験。作業の前に、酸素を作り出す森林の山が残っていることの大切さ、山の手入れ法の1つである間伐・枝打ちの重要性などの説明を受けたという。子供らからは、山に入るという非日常体験ができてとても楽しかったとの感想が聞かれたそうだ。柴山さんは「最近の子供は山に入る機会がほとんどない。頻繁に来てもらうのは難しいが、山を少しでも身近に感じてもらえれば」と話す。

 そば打ち・ピザ焼き体験なども人気があり、訪れる人は年々増加、県内外合わせて年間1万8千人に及んでいる。06年3月に廃校になった旧朝日小学校の面影を残す教室や教員室。そんな昭和の気分に浸り、里山の林業体験で、山の恵みに、改めて思いを馳せるきっかけになるはずだ。

【サスティナブル】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

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 うどう・ふみこ 元茨城放送レポーター。茨城県内の人・モノ・行事を2年間で、約800カ所取材。現在はフリーアナウンサーとして県内外で幅広く活動中。

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。