枯れ木の皮に火をつけると、積み重ねた薪の間からメラメラとオレンジ色の炎があがった。乾いた木はパチパチと小気味よい音をたて、あっという間にタイガの焚火(たきび)が始まった。
先月(11月1日付)、タイガの入り口にあるクラスヌィ・ヤール村から一家総出でチョウセンゴヨウの実を拾いに出かけた話を紹介した。そこでの焚火がとても心に残った。
チョウセンゴヨウの実を袋いっぱいに集めてひと汗かくと、子供たちが枯れ木を集め、適当な長さに折り始めた。年配のリョーバがその薪を重ねて躊躇(ちゅうちょ)なく火をつける。さらにY字の枝を組んでその上にしっかりした長い枝を掛け、すかさず水をくんだ鍋を釣り下げた。その手際のよさにほれぼれする。
森の中での焚火は慣れていないと山火事が怖い。実際ロシアでは雷やたばこの不始末などで毎年広大な森を燃やしてしまうのだが、この村人にとってタイガでの焚火はまさに日常茶飯事。その流れるような手つきに感心している間にポコポコと湯が沸き、火を囲んでの心温まる一服である。