西陣を中心に生産される織物の一つに、「金襴(きんらん)」がある。名前の通り、金糸や金箔(きんぱく)をふんだんに用いた絹織物である。豪華なものを指して「まるで金襴緞子のようだ」という比喩で用いられるように、豪奢で華麗なところが特徴だ。「RE-DESIGN ニッポン」の第11回は、西陣の地で金襴を製造する加地金襴を訪ねた。
日本だからこその織物
絹織物は世界各地で作られてきた。シルクロードを通じて伝わり、日本でも3世紀頃には絹織物の生産が始まったとされる。しかし、世界中に見られる絹織物の中で、金箔や銀箔を織り込んでいるのは西陣だけである。以前にも紹介した「引箔」(和紙に漆を塗り、金箔や銀箔を貼り糸状に裁断したもの)は、まさにこのための素材である。その箔素材をふんだんに織り込み、豪華さを演出したものが「金襴」と呼ばれる。和紙、漆、金箔や銀箔のそれぞれに高品質の素材を持つ日本だからこそ花開いた織物と言えるだろう。