「審査員も予算面から建設が厳しいことは分かっていたはずだ」。10月の新国立競技場の着工を前に、建築関係者はハディド案への複雑な思いを漏らした。
実際、審査段階でも委員の間では予算面などが課題として浮上していた。JSCは2012年9~11月に国際デザインコンクールを実施。審査委員は10人。委員長には日本を代表する建築家、安藤忠雄氏が就いた。
国内外から応募のあった46作品は最終審査でハディド案のほか、日本と豪州の計3作品に絞られた。「強烈」「斬新」。ハディド案はこう評価されたが、「コストが懸念」「修正が必要」とも指摘された。決選投票でも票が割れ、最後は安藤氏の“裁定”で決まった。
JSCの報告書によると、安藤氏は審査講評の中でハディド案を高く評価したが、「課題がたくさんあり、設計者と話し合いながら進める必要がある」とも付け加えていた。