【本の話をしよう】
人気作家の小川糸(おがわ・いと)さんが世に出るきっかけとなった「ポプラ社小説新人賞」から、また一人、新たな作家が誕生した。寺地はるなさん(38)のデビュー作『ビオレタ』は、「棺桶」を売る風変わりな店を舞台に、人の痛みと強さを温かに描き出した。
「何だかはしゃぐタイミングを逃してしまっていたのですが…。こうして本になると、やっと実感が出てきました。私のような天才ではない普通の人間でも、作家になれるんだなと」
小説を書き始めたのは、3年ほど前。「結婚をきっかけに出身地の九州から大阪に出てきたのですが、知り合いがいない。子供もまだ小さかったので、話し相手がいなくて…。どんどん自分の中に蓄積していく言葉を吐き出したかった。それまでは、小説はある種の天才だけが書けるのだと思っていたのですが、書いてみたら、書けたし、楽しかったんですね」