北京に来てまもない昨年9月初旬、地下鉄に乗っていたら、床でモゾモゾ動く何かが視界に入った。
下を見やると、中年のやせ細った男性がほふく前進しながら、喜捨(きしゃ)を求めて車両の通路を移動していた。下肢に障害があるらしい。ジャラジャラと音を立て、小銭の入った缶を手の甲で押して這(は)っていく後ろ姿を、呆然(ぼうぜん)と見送った。
ランボルギーニ2台でお迎え
北京の地下鉄では、お年寄りや幼児を連れて、カラオケで歌いながら物ごいをするケースが多い。怪しげなお菓子や冊子を売りつけるパターンもある。小学生らしき男の子を連れたお母さんもいる。平日の昼間なのに、学校へは行かしていないのだろうか。
各国の大使館や外国人向け高級アパートが集まる建国門付近を歩いていたときだった。おばあさんがおなかを押さえて路上に倒れ込んでいて、思わず「どうしたんですか」と声をかけた。すると横に立っていたおじいさんが「40元、40元あれば薬が買えるんだ」。